大阪府岸和田市で50年以上にわたり、水なすの漬物づくりを続ける株式会社丸作。関西では夏の風物詩として親しまれる水なすですが、賞味期限は約1週間と短く、全国へ届けることが難しい商品でもあります。そんな課題を解決するため、同社が取り組み始めたのが冷凍技術を活用した「冷凍水なす漬物」の開発です。アートロックフリーザーを導入後も、加工方法や原料選びを見直しながら挑戦を続けています。導入の経緯から現在の商品開発、今後の展望について代表取締役 澁谷和則様にお話を伺いました。
ーーーー導入いただいた経緯を教えてください。
当社は創業50年以上になる漬物専門店で、主力商品として水なすの漬物を製造しています。水なすの漬物は賞味期限が約1週間と短く、関西では親しまれていても、全国へ流通させることが難しい課題がありました。
一方で、「取り扱いたい」という声を県外のお客様からいただくこともあり、以前から急速冷凍には興味を持っていました。そんな時にアートロックフリーザーを知り、品川のテストルームで実際に凍結テストを実施。品質を確認した結果、商品化できる可能性を感じ、補助金を活用して2024年に導入しました。

ーーーー冷凍水なすの漬物、品質はいかがですか。
水なすはもともと冷凍が非常に難しい食材です。それでもアートロックフリーザーを使うことで、十分商品として成り立つレベルまで品質を高めることができました。
生の水なすの漬物と全く同じになるわけではありません。冷凍すると食感は少し柔らかくなり、調味液も中まで入りやすくなります。私自身は、やはりチルドの水なすが一番おいしいと思います。チルドの商品は、皮の部分だけが漬かり、少しなすの硬さが残る、浅漬けならではのおいしさがあります。
一方で冷凍商品は、それとは異なる魅力があります。以前、東京の通販会社に試食していただいた際には、冷凍水なす漬物が満点評価となり、そのまま採用が決まりました。関東のお客様には、少し味がなじみ、しんなりした食感の方が好まれるのかもしれません。その経験から、今では「チルドの代替品」ではなく、「冷凍ならではの商品」として考えるようになりました。冷凍することで賞味期限は約1年まで延長でき、流水で約15分あれば解凍できます。凍結時間も約30分程度で、製造の効率化と高い品質、利便性を実現できています。

ーーーー冷凍とチルドで、レシピは調整されていますか。
冷凍商品にするためには、従来の漬物づくりをそのまま冷凍するだけではうまくいきませんでした。一番の壁は変色。水なすの白い果肉部分が黒っぽく変色してしまうという課題がありました。試行錯誤の結果、カットした水なすを4切れほどと少量の調味液を一緒にパックし、その状態で冷凍することで、変色を抑えられるようになりました。解凍すれば一食分としてそのまま食べられる仕様です。調味液へ漬け込む時間や調味液の量、濃度も、冷凍専用に細かく調整しています。
しかし、丸ごとの水なすではまだ課題が残っています。丸のままだと中心まで調味液が浸透しにくく、解凍後に変色してしまうことがあります。調味液を十分に浸透させれば改善できる可能性はありますが、水なすは個体差が大きく、必要な時間も一定ではありません。そのため現在は、品質を安定させられるカット商品の開発を優先しています。

原材料そのものは変えず、配合やバランスを少しずつ調整しながら、検証を続けています。来年には新しいパッケージへの切り替えも予定しているので、それまでに「これだ」と思える商品を完成させたいです。将来的には、地元大阪で普段から水なすを食べ慣れている方々にも、生と冷凍を食べ比べてもらいたいと考えています。
----原料の水ナスは地域の生産者から仕入れているのですか。
水なすは同じ品種でも農家さんによって状態が大きく異なります。硬さや大きさはもちろん、井戸水で栽培しているか、川の水で栽培しているかによっても風味が変わります。生で食べる場合は少し柔らかい水ナスが好まれますが、冷凍すると食感が柔らかくなることを考えると、もともと少し硬めの水なすの方が最終的な仕上がりは良いかもしれません。仕入れ先の農家さんとも相談しながら、冷凍に最適な原料選びも検証を進めています。

----今後どのような市場を開拓する計画ですか。
本来は昨年から試作を重ね、展示会をきっかけに本格販売を開始する予定でした。しかし、中東情勢の影響で新しいパッケージ資材の調達が難しくなり、計画を変更せざるを得ませんでした。すでに注文をいただいている案件もあったため、まずは無地袋で商品化し、今年8月から試験販売を開始します。そして来年、新しいパッケージで本格展開する予定です。冷凍できるようになったことで賞味期限が大幅に延びたため、今後はネットスーパーや通販、生協など、これまで難しかった関西圏外への販路を積極的に広げていきます。
新規取引はすべて冷凍商品を前提に進めており、通販だけでなく、居酒屋など飲食店との商談も始まっています。一方で、関西では新鮮なチルドの水なす文化が根付いています。そのため、地元ではチルド、県外では冷凍という形で、それぞれの市場に合わせた商品展開を進めていきたいと考えています。これからも新しい販路を開拓するとともに、地元の方にも納得していただける品質を目指し、水なす漬物の冷凍をさらに磨き続けていきます。
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