秋田県内で焼肉店を展開する牛玄亭グループ。その加工部門を担うミートスマイル秋田株式会社では、冷凍ハンバーグの製造効率と品質の両立を目指し、アートロックフリーザーを導入しました。従来のプレハブ冷凍庫では解決できなかった課題を克服したほか、グループ内外との連携や地域資源の活用を通じて、持続可能な食肉ビジネスの構築にも挑戦しています。導入の背景から現在の取り組みについて、代表取締役の黒澤和則様に伺いました。
ーーーーアートロックフリーザー導入の背景を教えてください。
冷凍ハンバーグ製造するにあたり、導入前はプレハブ冷凍庫で冷凍していましたが、粗熱取りから凍結完了まで約1日かかり、翌日に持ち越すことが多い状態でした。製造時間に加えて品質においても、焼成後の水分が抜けて、乾燥や劣化が進んでしまう点が課題に。そこで、焼きたてをそのまま急速冷凍できるアートロックフリーザーを5年前に導入しました。
ーーーー導入後、どのような変化がありましたか。
最も効果を感じているのは凍結時間の短縮です。1日かかっていたものが約3時間で完了するようになり、生産効率が大きく改善されました。従来使用していたプレハブ冷凍庫は在庫品のストックスペースとして活用しています。凍結時間が短くなったことで乾燥などの劣化が抑えられ、品質を維持したまま生産量が増加。結果的に、売上を向上させることができました。

ーーーー冷凍商品の販売方法について教えてください。
導入当初はオンライン販売を軸に、ギフト向けの高付加価値商品としてハンバーグを展開していました。ただ、その後お弁当などにも広げたことで事業が分散してしまったため、一度オンラインを停止。現在は、ハンバーグとすき焼きの二本柱に絞って再始動の準備を進めています。
牛玄亭グループの焼肉店約10店舗で店頭訴求を行い、オンラインで受注・発送する分社連携モデルを計画しており、お歳暮やお中元、誕生日、入学祝いなどのギフト用途での利用を想定しています。最近は家庭で揚げ物や焼肉を避ける傾向もあるので、レンジで調理できる本格的なハンバーグは、そうしたニーズに応えられると考えています。

ーーーー製造体制について教えてください。
ハンバーグは、朝に仕込みと成形を行い、昼までに焼成。その後、約3時間で急速冷凍し、真空包装して保管する流れ。1〜2名体制で、1人あたり180〜200個/日が目安です。冷凍したハンバーグとソースを袋詰めし、真空パックしてプレハブ冷凍庫で保管。すき焼きの場合は、スライスした肉とタレをそれぞれ冷凍し、セット商品として提供します。
ーーーー精肉加工にも活用されていますか。
牛玄亭グループでは飲食部門と加工部門を分社化しており、ミートスマイル秋田が加工を担っています。グループの焼肉店向けに、一頭買いしたブロック肉を加工し、使いやすい形で供給。スライス肉などはアートロックで冷凍してから輸送し、ハラミのように変色しやすい部位や当日使用分は、生のまま出荷しています。

また、アルコール凍結機も併用しています。ブロック肉はアルコール凍結と相性が良く、先に真空してから凍結。一方で、スライスや焼成済み製品など加工度の高いものは、空冷のアートロックと、最適な凍結方法を使い分けています。今後、人手や設備に依存せずに店舗運営を支えられる仕込み済み冷凍加工肉の需要はさらに高まっていくと見ています。現在はグループ外への展開は県内の一部にとどめていますが、通販事業とのバランスを見ながら、段階的に対応していく考えです。
ーーーークラウドファンディングの取り組みについて教えてください。
クラウドファンディング「あきたすき」は、地域の生産者と連携し、冷凍すき焼きセットを通じて地域産業の価値循環を目指すプロジェクトです。この取り組みの背景にあるのは、原価高騰や後継者不足といった、生産現場が直面する深刻な課題です。飼料価格の高騰により、手間とコストをかけて育てた牛が採算に合わない価格でしか取引されず、やむを得ず廃業を選択する生産者も増えています。
また、牛肉はキロ単価で取引されるため、近年では、美味しさを保ちながら丁寧に大きく育てる肥育方法も一般的になっています。これは安定供給や市場ニーズへの対応といった商業的合理性がある一方で、生産者にとっては理想と現実の間で葛藤を伴う選択でもあります。そのため、生産現場では、美味しさと経営性の両立を意識しながら、日々工夫を重ねた肉づくりが行われています。

こうした状況の中で、「地元の人が地元の牛を食べる文化をつくる」ことが、持続可能な畜産業の第一歩になるのではないかと考え、このプロジェクトを立ち上げました。商品は4人前で5,000円〜1万円程度と、日常より少し贅沢でありながらも、外食に比べると手に取りやすい価格帯に設定しています。家族の誕生日やちょっとした特別な日に、地元の食材を楽しんでもらう。そうした積み重ねが地域の需要を生み、生産継続を支える力になることを目指しています。

ーーーー導入から5年を振り返っていかがですか。
製造効率と品質の両面で効果を実感する一方で、これまでは焼肉店として肉そのものの良さを打ち出してきたため、冷凍技術の価値を伝えきれていなかった側面もあると感じています。冷凍に対する消費者の理解が進みつつある今だからこそ、今後は利便性だけでなく、美味しさを保ちながら地域食材を届ける技術力も発信していきたいです。
また、冷凍は、地域で育てられた食材を適切な状態で届け、生産者が事業を継続できる環境づくりの一助にもなり得る技術です。自社での活用にとどまらず、地域の畜産業に対しても価値提供を広げていきたいと考えています。
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