秋田県大館市で長年地域に愛され続ける「割烹 美さわ」。比内地鶏スープのきりたんぽ鍋をはじめ、地元食材を活かした料理を提供する同店では、冷凍食品市場の成長に着目し、冷凍商品の開発に取り組んできました。導入から約3年の現在、アートロックフリーザーは冷凍商品の製造だけでなく、店舗運営を支えるインフラとして、計画仕込みによる原価率改善や食品ロス削減など、多方面で成果を生み出しています。「割烹美さわ」代表の三澤文人様に、活用方法や導入後の成果、今後の展望まで、お話を伺いました。
ーーーーアートロックフリーザー導入の背景を教えてください。
コロナ禍よりも前から、冷凍食品市場に将来性があると感じて急速冷凍機の調査を進めていました。当時の目的は、お店で提供している料理を商品化し、冷凍販売していくこと。旬や地域性に左右される生鮮ギフトとは異なる「一年を通してお客様に届けられる商品」を作るために、冷凍技術の活用が必要でした。

アートロックフリーザーを選んだ一番の理由は、空気で凍らせる構造です。煮物のような柔らかい料理や、揚げたての天ぷらなども形を崩さず凍結でき、温かいまま投入できる点も魅力でした。すべての食材が冷凍に向いているわけではありませんが、多くの商品で品質劣化を感じることがなく、導入に至りました。
ーーーー現在の人気商品を教えてください。
冷凍商品の一番人気は「きりたんぽ鍋」です。そのほかにもカツ丼などの肉料理がよく売れています。店舗で提供している料理をそのまま商品化するものと、冷凍用に設計を変えているものがあり、その代表例がきりたんぽ鍋です。
きりたんぽ鍋は、具材の種類や配置、重量のバランス、容器内に入れる順番まで細かく検証を繰り返しました。電子レンジで加熱した際に均一に温まり、最適な食感や味わいを再現するために、スープと具材を分ける二層構造を採用。下段には比内地鶏のスープを入れ、舞茸やごぼうなどを加熱した状態で一緒に凍結します。上段にはきりたんぽ、ネギ、鶏肉などの具材を配置。きりたんぽはあらかじめ煮込んで味を含ませ、店舗で提供する直前の状態まで仕上げてから冷凍しています。凍結時間は下段の出汁が1時間強程度、上段はさらに短いです。



解凍方法は、凍ったまま蓋を外さず、二段の容器をセットした状態で電子レンジで約8分加熱します。その後、スープと具材を合わせて完成です。きりたんぽをスープに浸した状態で凍結すると、中心まで解凍する頃には周囲だけが熱くなり、表面は熱々なのに中に氷が残っているような状態でムラがでてしまいます。一方で、きりたんぽはしっかり温まらないと本来のふわふわ感が出ません。二層構造にしたことで、スープと具材が均一に加熱され、きりたんぽも理想的な状態で仕上がるようになりました。
野菜も、ネギは多少柔らかくなりますが、セリの食感はしっかり残っています。冷凍きりたんぽ鍋は『ご当地冷凍食品大賞2025-2026』において、金賞と審査員特別賞をダブル受賞。試行錯誤を重ねて作り上げた品質が、高く評価されています。
ーーーーお客様の反応はいかがでしょうか。
リピート購入される方も増えてきました。現在は、自社EC、ふるさと納税、店舗前の冷凍自販機で販売していますが、売上の中で最も大きいのはふるさと納税です。一人暮らしのお子さんへ親御さんが送られるケースもあり、進学や就職で上京されたご家族に、地元の味を届けたいという需要は大きいです。また、お店の向かいには冷凍自販機を設置。売上だけでなく、お店や商品の存在を知っていただく広告塔としての役割も果たしています。

ーーーーマグロの冷凍寿司も販売されているのですね。
天然本マグロのトロと赤身を使用した寿司を販売しています。マグロは冷凍すると変色しやすい食材ですが、当店のマグロの冷凍寿司はほとんど変色はありません。冷凍マグロの品質維持には、凍結技術だけではなく、マグロ自体の品質や鮮度も大切です。天然本マグロであることはもちろん、漁法によっても品質の維持しやすさが変わります。例えば巻き網漁のマグロは生食では美味しいですが、冷凍寿司として再現すると変色しやすい。解凍後の品質まで見据えて、原料を厳選しています。
冷凍寿司製造後は−60℃で保管し、自販機では−22℃で販売。品質維持のため、自販機内の商品は1か月以内を目安に入れ替えています。
おすすめの食べ方は自然解凍です。さらに、少し温めたお皿の上に寿司を載せていただくと、赤酢を使用したシャリの香りがより引き立ちます。ネタに直接熱が伝わらないよう、ネタのサイズや厚みにも工夫を施しており、解凍後のおいしさを最大限に引き出せるよう細部までこだわっています。


ーーーー店舗運営でも活用されているのでしょうか。
冷凍商品の開発以上に効果を感じているのが、店舗運営での活用です。特に、高単価で品質変化に敏感なマグロでは大きな効果を実感しています。
以前から−60℃のストッカーは保有していましたが、一度に大量のマグロを入れると庫内温度が上昇し、変色やドリップが発生してしまうことが課題でした。一方、アートロックフリーザーで凍結したマグロは、変色やドリップがほとんど見られません。マグロは150kg前後を仕入れることが多いのですが、アートロックフリーザーがあれば、その日のうちに柵取りして一気に凍結できます。現在は従来の−60℃ストッカーを保管専用として活用。品質が良く価格も安いタイミングでまとめて仕入れられるようになり、原価率の低減にもつながりました。
冷凍仕込みはマグロだけではありません。タコや牛肉、馬肉などの食材も計画的に凍結し、ローストビーフなどの調理品はまとめて製造したうえで真空包装し、冷凍保管しています。必要な分だけ解凍して使用できるため、食品ロスの削減にも大きく貢献しています。

製造は営業中の店舗とは別に設けた旧店舗の仕込み用キッチンで実施。冷凍商品の製造を担当するスタッフが在庫状況を見ながら計画的に生産しており、営業への負担を増やすことなく、生産性向上を実現しています。
ーーーー導入後の成果について教えてください。
一番大きな成果は原価率の改善です。以前は45%程度だった原価率が、現在は40%前後まで低減し、約5%の改善につながりました。品質の良い食材を価格が安いタイミングでまとめて仕入れられるようになったことに加え、食品ロスがほぼなくなったことが大きな要因です。一方で、冷凍商品の売上にはまだ伸びしろがあると感じています。店舗売上の年間約1億円規模に対して、冷凍商品の売上は現在数百万円台。ふるさと納税やEC販売を中心に着実に伸長しており、今後の成長が期待される分野です。
ーーーー今後の展望をお聞かせください。
今後は人気商品に絞り込みながら、さらに磨き込んでいきたいと考えています。特にきりたんぽ鍋やカツ丼は、まだ改良の余地があります。カツ丼は現在、自販機やふるさと納税向けに販売していますが、もともと自販機用に設計したため少し小ぶりです。今後はご飯の量やサイズを見直し、一食でしっかり満足感を得られる商品へと進化させていきたいです。業務用サイズの商品開発も進めており、飲食店向けの卸販売や外販の強化も視野に入れています。先日のFROZEN SUMMIT商談会でも、レバー煮などを業務用商品として提案しました。

アートロックフリーザーによって、お店の味を高品質なまま届けられる環境が整いました。冷凍技術を活用することで、今後は冷凍事業を新たな柱へと育てながら、より多くのお客様に美さわの味と秋田の食文化の魅力を届けていきたいと思います。
卸に頼らず地元で価値を磨くために。揚げたて冷凍という新たな選択肢 大阪・箕面で地域に愛され続けるコロッケ専門店「コロッケ・クロケッタ」。祖父の代から受け継ぐレシピをもとに、イタリアンの感性を取り入れた多彩なコロッケを展開 […]
北海道・オホーツク海沿岸に位置する常呂町。豊かな海に育まれたこの地で、代々ホタテ漁を営んできたのが株式会社カネサ相田です。同社では、これまで市場出荷を中心としてきた事業に加え、3年前からEC販売を本格スタート。自社ブラン […]
大根おろしやブロッコリーも、前処理研究で生の食感を再現 地域の農家と連携しながら、冷凍加工によって有機野菜に新たな価値を生み出しているHinata Organic Elements合同会社。同社では、有機野菜をカット・冷 […]