時短ニーズや食品ロス削減への意識の高まり、そして将来的な人手不足への対応など、小売業を取り巻く環境は変わりつつあります。こうした中、スーパーマーケット「ダイエー」を展開する株式会社ダイエーでは、「アートロックフリーザー」を活用し、新たな冷凍商品の開発やイートインメニューの展開など、冷凍技術を活用したさまざまな取り組みを推進しています。導入経緯から現在の取り組み、そして将来を見据えた冷凍戦略について、営業部長の小林秀峰様にお話を伺いました。
ーーーーアートロックフリーザーを導入した経緯を教えてください。
当社では以前から、高鮮度でおいしい商品を提供することを大切にしています。その中で、「できたてのおいしさを、ご家庭でも味わっていただける方法」を模索していました。消費者ニーズを分析する中で、高品質な冷凍の需要が見込まれると考え、冷凍商品の開発を本格的に検討し始めました。
さまざまな急速冷凍機の中でも、アートロックフリーザーは細胞を傷めにくく、素材本来の鮮度や食感を維持できる点が大きな魅力でした。さらに、温かい食品もできたての風味や香りをそのまま閉じ込められるため、鮮魚・精肉から惣菜、パンまで幅広い商品に対応できます。何度も凍結テストを行い、安全性や品質を確認したうえで、導入を決めました。
ーーーー現在のお取り組みについて教えてください。
惣菜、鮮魚・精肉、フルーツなどを中心に新しい冷凍商品の開発を進め、高品質な冷凍食品「冷凍dai革命」シリーズの展開を2023年9月からスタートしました。「冷凍だから便利」ということだけではなく、「特殊冷凍だからおいしい」という価値をしっかり伝えるために、売場では、特殊冷凍によって品質を維持できる仕組みをわかりやすく紹介するPOPを設置し、お客様に選んでいただけるよう工夫しています。特に人気がある商品は、冷凍フルーツやスイーツ、大容量のえびなどの素材商品です。「必要な時に使える」「好きな時に食べられる」という価値が、お客様の生活スタイルに合っているのだと思います。

また、「冷凍dai革命」の商品には、惣菜売場で販売している商品と同じ価格で展開しているものも数多くあります。例えば、焼き魚やピザ、カツ丼・天丼などの丼メニュー、カットフルーツなどです。一部店舗では、常温の惣菜と冷凍商品を隣り合わせで販売していますが、それぞれに需要があります。冷凍商品を「できたての味に近い」と評価してくださるお客様もいらっしゃる一方で、購入してすぐに食べられる惣菜にも魅力があります。
消費者に寄り添うスーパーは、どちらか一方を提案するのではなく、お客様の生活スタイルに合わせて選べることが大切だと考えています。冷凍商品の展開によって、惣菜売場では「今すぐ食べる」という選択肢に加え、「好きなタイミングでおいしく食べる」という新しい価値をご提案できるようになりました。

ーーーー「冷凍dai革命」の販売実績について教えてください。
現在、「冷凍dai革命」の商品ラインナップは店舗によって異なりますが、最大で約100種類まで拡大。2025年度の販売実績は約47万パックとなり、前年の37万パックから約1.3倍に伸びました。時短ニーズの高まりに加え、冷凍食品に対するお客様の意識も変わってきていると感じます。これまでは「保存のための冷凍」という印象が強かったと思いますが、現在は「おいしい冷凍食品」「こだわった冷凍食品」を選ばれる方が少しずつ増えてきました。そうした消費者の意識の変化も、販売拡大の後押しになっていると感じています。
ーーーー冷凍商品の販売以外にも活用されていますか。
ここ最近は、一部店舗で解凍販売の実験が始まりました。例えば惣菜やベーカリー売場では、パンや天ぷらは時間が経つにつれて品質が変化してしまいます。そこで、焼きたて・揚げたてをすぐに冷凍し、売場の状況に応じて解凍することで、できたてに近い品質の商品をいつでも提供できるようにする運用を検証しています。もし成果が確認できれば、他店舗へ展開する可能性もあります。


ーーーーカフェスペースでも展開していただいているとお聞きしました。
アートロックフリーザーを導入されている事業者の商品を仕入れ、一部店舗のカフェメニューとして提供しています。三重県のもちもち小麦を使ったシフォンケーキや、東京・青山で人気のバスクチーズケーキ、ミシュランガイド選出店のピザなど、高品質な冷凍だからこそ実現できるこだわりの商品をラインナップしています。
提供にあたっては、商品の魅力を最大限に引き出せるよう、解凍方法を細かく検証し、それぞれが最もおいしい状態で味わっていただけるよう工夫しています。こうした取り組みもあり、お客様からは大変ご好評をいただいています。また、一部商品は冷凍商品としても販売しており、「ここで食べておいしかったから、自宅でも楽しみたい」と感じていただいたお客様が、そのままご購入いただける導線も整えています。

また、このような魅力ある商品との出会いを増やすため、2025年7月にはデイブレイクさんと商談会も開催しました(※)。今後も全国のさまざまな事業者の皆さまと連携し、新しい商品との出会いをお客様へ届けていきたいと考えています。
(※)ダイエーとデイブレイクの連携で業界初の高品質冷凍食品に特化した商談会を開催。小売と製造を繋ぎ、新しい流通を広げる

ーーーー今後、冷凍に期待することを教えてください。
冷凍食品を販売するだけでは、ご家庭の冷凍庫容量という制約があるため、一定の限界があります。一方で、高品質な商品を必要なタイミングで解凍して提供できれば、冷凍の活用範囲はさらに広がっていくと思います。また、今後は労働人口の減少が進み、限られた人数で店舗を運営していかなければなりません。その中で、サービス品質を維持しながら生産性を高めるためには、冷凍を活用した計画生産がこれまで以上に重要になると考えています。
私たちは、冷凍を単なる保存技術ではなく、これからの店舗運営やサービスを支える技術として捉えています。だからこそ、冷凍商品の販売だけでなく、解凍販売や店舗オペレーションの改善、新たな商品開発など、さまざまな角度から挑戦を続けています。将来の働き方や人材不足も見据えながら、お客様へのサービスをさらに向上させるために、冷凍の可能性を最大限に活かしていきたいと思います。
秋田県大館市で長年地域に愛され続ける「割烹 美さわ」。比内地鶏スープのきりたんぽ鍋をはじめ、地元食材を活かした料理を提供する同店では、冷凍食品市場の成長に着目し、冷凍商品の開発に取り組んできました。導入から約3年の現在、 […]
卸に頼らず地元で価値を磨くために。揚げたて冷凍という新たな選択肢 大阪・箕面で地域に愛され続けるコロッケ専門店「コロッケ・クロケッタ」。祖父の代から受け継ぐレシピをもとに、イタリアンの感性を取り入れた多彩なコロッケを展開 […]
北海道・オホーツク海沿岸に位置する常呂町。豊かな海に育まれたこの地で、代々ホタテ漁を営んできたのが株式会社カネサ相田です。同社では、これまで市場出荷を中心としてきた事業に加え、3年前からEC販売を本格スタート。自社ブラン […]