冠婚葬祭の料理は、お客様にとって大切な時間を彩るものです。一方で、その提供現場では、通夜や葬儀の料理が当日の朝に確定するなど、極めて短時間で調理・配送まで完了しなければならないという特殊な事情があります。冠婚葬祭事業を展開する株式会社平安では、こうした課題に向き合うため、アートロックフリーザーを導入。現在は、魚や肉、煮物の具材、寿司のシャリ玉などを高品質に冷凍ストックし、効率的な運営を実現しています。導入の背景や活用方法、冠婚葬祭業界ならではの課題、そして今後の展望について、総料理長の井口登喜広様にお話を伺いました。
ーーーー導入の背景を教えてください。
アートロックフリーザーを導入する前は、約30年間窒素凍結機を使っていました。窒素を活用すれば品質は保てるものの、ランニングコストが高くなります。一方で窒素を使わずに運転すると、一般的な緩慢冷凍とほとんど変わらず、食材からドリップが出て品質が劣化。まとめて仕入れて冷凍しても、逆にコストが高くなってしまうこともありました。新しい冷凍機を探し始めましたが、自社の規模や運用に合い、凍結スピード、品質、メンテナンス性まで満たす機械はなかなか見つかりません。そんな中、アートロックフリーザーの紹介を受け、他の冷凍機と違って凍結後も食材に霜がほとんど付いていない様子を見て、導入を判断しました。

ーーーー冷凍はどのような食材・シーンで活用されていますか。
現在は、魚や肉、煮物の具材、寿司のシャリ玉など、幅広い食材の冷凍に活用しています。基本的には下処理から二次工程まで仕上げて冷凍し、当日は再加熱と盛り付けだけを行います。例えば魚は、切り身にして下味まで付けて冷凍。使用時にはスチコンで焼き上げます。サワラやスズキなどの季節魚、アブラカレイなども冷凍ストックし、必要な分だけ解凍して活用。肉もスライスした状態でバラ凍結しておくことで、必要量だけ解凍でき、余った分は再び保管できます。寿司のシャリ玉は、最近は赤酢のシャリに変えました。赤酢は砂糖や塩を多く入れなくても、お米が締まりながら硬くなりにくいので、冷凍との相性も良いです。
この厨房は各会館へ料理を供給する役割も担っており、冷凍ストックした食材を毎日の配送便に載せて各会館へ届けることで、現場では最終調理だけを行える体制を整えています。



ーーーー業界の課題に対して、冷凍が貢献できたことはありますか。
法事料理は2〜3週間前から予約が入りますが、お通夜や葬儀の料理は、注文が分かるのは当日の朝8時です。早い場合10時には届けなければならないので、輸送時間を考えると実質1時間ほどしか調理時間がありません。そのため、従来は当日調理に追われたり、一部を既製品に頼らざるを得ないケースもありました。でも、本来なら自社で作った料理を提供したい。そのためには、調理方法そのものを変えていく必要があります。冷凍ストックを活用することで、煮物の具材や焼き魚などを事前に仕込み、当日は仕上げだけで対応できるようになりました。今ようやく、自社で製造できる体制が少しずつ形になってきたと思います。

近年は家族葬が増え、葬儀の規模も変化しています。昔は30人、40人という葬儀も珍しくありませんでしたが、今では10人以内ということも多いです。そのような少量注文でも、冷凍なら必要な分だけ対応できます。5個だけ、10個だけ解凍して使えますし、もし余っても翌日に使えます。高齢化や少子化によって変化するそうしたさまざまな需要に柔軟に対応できるのも、冷凍の強みだと思います。
ーーーー仕入れやコストの部分で変化はありましたか。
アートロックフリーザーの導入によって、仕入れの考え方も変わりました。既製品を仕入れるより、自社で調理して冷凍したものを使う方が、コース料理1品あたり10円〜20円原価を下げられます。10品のコース2000食を提供する場合20〜40万円削となり、毎月何千食もの料理を提供する中では大きなコスト削減につながります。
さらに、旬の終わりに価格が下がった魚を購入し、翌シーズンまで保管する運用も始めました。例えばマダラは、シーズン終盤の2月頃に仕入れて冷凍しておけば、約8か月後の11月、まだ市場価格が高い時期でも安心して使えます。真空包装した状態でアートロックフリーザーで凍結し、マイナス24℃で保管すれば、およそ1年経っても品質に問題はありません。

ーーーー人員体制について教えてください。
現在、料理人は4名、パートスタッフは4名で厨房を運営しています。これからは料理人もどんどん減っていく時代です。人は増やしたいけれど、なかなか集まりません。ここではそうした将来を見据え、冷凍在庫は専用の仕込み予定表で管理し、不足しそうな食材は必要日から逆算して計画的に製造しています。この仕事は本当に予測が難しいので、急に食材が一気になくなることもありますが、冷凍ストックがあることで対応できる幅は広がりました。
ーーーーこれからの冷凍技術に期待することはありますか。
急な注文が入る環境では、既製品を買ってくれば対応できますが、それでは自分たちのオリジナリティは出せません。コストを抑えながら理想の味を実現するには、高品質な冷凍が必要です。下味を付けて冷凍しても、ドリップが出ると一緒に旨味も流れてしまいます。焼き上げた時に味がぼやけたり、魚の生臭さが残ってしまう。それでは自分が作りたい料理にはなりません。

今いる人員でどうやって品質を落とさずに回していくかを考えた時に、そのための手段の一つが、アートロックフリーザーだと思っています。料理人の高齢化も進んでいきますし、今までと同じやり方では対応できなくなる場面が増えてくるはずです。だからといって既製品ばかりに頼るのではなく、自分たちの味をお客様に届けたい。そのためには、冷凍技術が欠かせません。これからも時代に合わせてやり方を変えながら、自社ならではの料理を届けていきたいと思います。
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