地域に根ざし、長年愛され続けてきたラーメンは、家族や故郷とのつながりでもあります。皿谷食堂では、コロナ禍をきっかけに冷凍技術を活用した新たな挑戦をスタートしました。アートロックフリーザーの導入により、お店の味をそのまま全国へ届けるだけでなく、地域資源の活用や開拓にも踏み出しています。今回は、導入背景から現在の活用、そして今後の展望までを、代表取締役の皿谷一巳様に伺いました。
ーーーー改めて、導入いただいた経緯を教えてください。
コロナ禍の頃、常連のお客様から、東京の大学に進学された息子さんが帰省できず、「皿谷の中華そばを食べられない」というお話を伺ったんです。「なんとか食べさせてあげたい」というお母様の想いに応えるために、お店で冷凍して送ってみたところ、後日SNSで感謝の言葉をいただきました。「息子に喜んでもらえて、元気にしていることが分かって本当に良かった」と仰っていただけたことが、とても印象に残っています。
この体験を通じて、冷凍販売には単なる利便性以上の価値があると実感しました。そこから少し時間はかかりましたが、事業再構築補助金を活用して、約2年前にアートロックフリーザーを導入。同時に、店舗に隣接する形で加工場も新設し、製麺製造業・惣菜製造業・飲食業の許可を取得できる体制を整えました。

ーーーーアートロックを選んでいただいた理由は何でしょうか。
「お店の味を、納得できるクオリティで再現できるか」という点が決め手でした。中でも印象的だったのは、アートロックで冷凍した麺とスープを、約1年半後に試食したときのことです。マイナス25℃のストッカーで保管していたラーメンを解凍して食べてみたところ、麺には多少の食感変化があったものの、スープはほとんど劣化を感じなかった。この結果を受けて、「これなら商品として成立する」という手応えを得ました。
ーーーー現在の活用方法について教えてください。
自社ECと店頭で冷凍ラーメンを販売しています。レジ前に冷凍ショーケースを設置しており、店舗で食べて「美味しい」と感じたお客様が、そのまま冷凍商品を購入してくださるケースが増えてきました。今後は敷地内に冷凍自販機を設置して、販売チャネルを拡充させる計画です。また、現在は麺・スープ・具材をそれぞれ別々に冷凍していますが、より利便性を高めるために、丼の中で層構造にした一体型商品の開発も進めています。販路については外部プラットフォームの活用も進めており、冷凍ラーメン専門のプラットフォーム「宅麺ドットコム」では、5月から販売が始まる予定です。
販売開始から1年ほどで、売上はまだ立ち上げ段階ですが、今年上半期だけで前年の年間売上規模に到達しており、伸びは非常に好調です。今後は前年比350%の成長を目標に、さらなる拡大を目指していきます。

ーーーー販路拡大の戦略について教えてください。
最近は、広報・PRに力を入れています。店主である私自ら情報発信を継続。昨年9月からの半年間は、毎月何かしらのメディアに露出することを目標に取り組んできました。また、当店では10代から90代まで幅広い世代の従業員が働いているため、商品だけでなく「人」にスポットを当てたストーリーも発信。創業の想いや理念、地域とのつながりを一貫したメッセージとして発信し続けることで、ブランド認知が高まり、店舗への来客数やWeb流入の増加、さらにはEC売上の伸長にもつながっています。冷凍ラーメンは、常連のお客様に加えて、新たな顧客層の開拓を後押しする販促ツールとしても機能しており、事業全体の広がりに影響しています。
ーーーー品質管理についてはいかがでしょうか。
当店のスープは、昆布や椎茸などの自然素材のみで作っており、添加物は一切使用していません。それでも、第三者機関による検査を経て、1年3ヶ月の保存でも品質・安全性に問題がないことを確認しています(実運用では余裕を見て賞味期限を1年に設定)。うまみや風味もしっかりと再現できており、化学調味料を使用せずにここまでの保存期間と再現性を実現できるのは、冷凍技術があってこそです。
また、麺については軽く下茹でした状態で冷凍しています。冷凍前の茹で時間は15秒に設定し、その後水で締めて表面をコーティングしてから凍結。この工程により、解凍時間の短縮だけでなく、衛生面の向上にもつながっています。生麺の場合は約3ヶ月で菌の発生が確認されますが、下茹でを行うことで保存性が大きく向上します。こうした下茹でと急速冷凍の組み合わせによって、衛生性と解凍効率の両立を実現。飲食店においては、QSC(商品クオリティ・サービス品質・衛生管理)の観点が非常に重要ですが、アートロックは特に衛生管理の面でも貢献していると感じています。

ーーーー冷凍ラーメン以外での活用はありますか。
「生そば」の冷凍にも非常に役立っています。以前は毎朝30分かけて仕込んでいましたが、現在は月2回まとめて仕込み、打ち立てをすぐに冷凍ストックする運用に転換。提供時はそのまま釜で解凍し、冷水で締めるだけです。うちの蕎麦は二八蕎麦で、そばは時間とともに風味が落ちやすい食材ですが、アートロックで保管することによって打ち立ての鮮度を維持できます。従業員の負担軽減と品質維持を両立でき、飲食店にとって「朝30分の余裕」が生まれることの価値は非常に大きいです。

ーーーー今後の展望について教えてください。
今準備している冷凍自販機には、ラーメンだけでなく、地域資源を活かした商品展開をしていきたいと考えています。例えば山形はフルーツの産地でもあるので、規格外品を急速冷凍することで、ロス削減と新商品開発を両立できます。地元農家さんの支援にもつなげていきたいです。
また、キッチンカーやイベント出展も視野に入れています。冷凍品であれば、給排水設備が不要となり、出店のハードルが大きく下がります。通常出店が難しいラーメンを独占的に提供できるので、ラーメン消費量が日本一の山形県ならきっとお喜びいただけると思います。冷凍技術を活用することで、地域に根差し、愛され続けてきた味を大切に守りながら、国内外へと広げていく。その可能性をこれからも追求していきます。

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