2026.01.23 導入事例 農業・農産加工 野菜・果物 品質向上 新商品開発 計画生産 販路拡大 食品ロス 中四国

JA香川県、冷凍事業で生産者の収益拡大へ いちご「さぬきひめ」を軸に県内ブランドの販路を全国へ

JA香川県はロス削減と販路拡大を目的に冷凍・冷蔵事業を始動しました。地域特性と輸送課題に合わせて冷凍で広域展開を図り、「さぬきひめ」などの果実・野菜で品質保持とブランド訴求を進めています。JA香川県が推進する冷凍技術を活用した地域農業についてお話を伺いました。

販路拡大やロス削減による生産者の収益拡大に向けて注目した「冷凍」

ーーーー冷凍技術を導入した背景を教えてください。

香川県の野菜や果物、とりわけブランド品種の販路拡大や、規格外品の活用による食品ロス削減、それによる生産者の収益拡大を目的に、約5年前から冷凍には関心を持っていました。しかし当時は、部門間の調整が十分にできておらず、誰が主体となって進めるのかが曖昧なまま、構想が停滞してしまいました。転機となったのは2022年、副理事長主導で「事業開発課」が新設されたことです。事業開発課は複数の新規事業を手がけますが、その中でも冷凍事業は最重要テーマとして位置付けられ、これまで止まっていた議論や検討が一気に進み、本格的に動き出しました。

ーーーーデイブレイクとの出会いと導入の経緯は?

全農系スタートアップカンファレンスを通じて接点を持ったのが最初です。そこで冷凍技術の話を聞き、実際に凍結テストを行いました。野菜・果物ともに状態が非常に良く、手応えを得たことで、2023年11月にアートロックフリーザーを導入。冬から本格的に冷凍事業をスタートさせました。現在、冷凍事業を始めて約2年に至ります。

香川県のいちごブランド「さぬきひめ」を物流制約を超えて全国へ

ーーーー販路拡大を目指すブランド品種について教えてください。

代表的なブランドは、香川県のいちご「さぬきひめ」です。表面が薄くてやわらかく、春先まで甘さが持続するのが特徴で、他品種と比べても最後まで美味しさが続きます。一方で、傷みやすく、遠距離の生鮮輸送には向かないという課題があり、これまで主な流通先は関西圏に限られていました。冷凍によって品質を保つことができれば、関東などの遠方地域への展開も可能になります。物流制約を超えてブランド価値を伝えたい。その実現手段として、冷凍に大きな期待を寄せていました。

野菜はブロッコリーやアスパラガス、果物はいちごやブドウなど多品目の冷凍加工を手がける

ーーーー現在の冷凍・冷蔵加工体制について教えてください。

冷凍加工の対象は、野菜と果物です。野菜ではブロッコリー、アスパラガス、少量ですがスイートコーンを扱っています。果物は、いちご、ピオーネ、シャインマスカット、柿、イチジク、デコポンなどです。また、学校給食向けの需要を背景に、冷蔵加工にも取り組んでおり、主力はカットブロッコリーです。今後はカットキャベツやカット玉ねぎなどにも広げていきたいと考えています。

原料はすべてJA香川県の集荷経由で、組合員数は正組合員約5.4万人、准組合員約8.4万人、合計約13.8万人にのぼります。原則として県内産に限定していますが、外部からの加工依頼については、条件を満たせば県外品の受託加工にも対応しています。

ーーーー生産体制はどのように構築されていますか。

稼働は毎日約7時間。製造量は品目によりますが、いちごで1日70〜80kg、桃は皮むき作業の負荷もあり約40kg程度です。定常体制は2名ですが、集荷が多い時期や冷蔵ブロッコリーの加工が重なる場合には、最大10名体制で対応します。立ち上げ当初から関わっている熟練スタッフが中心となり、新人教育を継続してくれています。

卸先から高まる「使いたい時に、少量」の需要

ーーーー販売先の反応はいかがでしょうか。

ひとり暮らしや核家族化が進む中で、少量・即使用が可能な冷凍・カット野菜の需要は年々高まっていると感じます。販売はJA香川県からの直接卸と、商社を通す場合がありますが、特に直接取引の飲食店や小売からは、期待の声が多いです。現在はブロッコリー、アスパラガス、スイートコーンが中心ですが、葉物野菜やオクラなどへの拡充要望も強く、加工対応力の強化が今後の課題です。

生産者に還元するために見据える「価格と量の安定」

ーーーー冷凍事業を通じて、生産者へどのように還元したいですか。

当初は、規格外品を積極的に買い取ることで、生産者の手取りを増やす構想もありました。ただ、JAに集荷される時点で一定基準を満たしているため、それ以外を扱うには基準設定や歩留まり悪化、選別負荷といった課題が多く、現実的には難しい面があります。そこで今、より現実的だと考えているのが「仕入れ価格と量の安定」です。冷凍加工用として、あらかじめ仕入れ量や価格を決めておくことで、生産者は計画的に生産できます。価格変動や廃棄リスクを減らすことができる点は、生産者に少しでも還元できると考えています。

アートロックフルーツグループがもたらした大きな後押し

ーーーーアートロックフルーツグループへの参画について教えてください。

冷凍加工は、何も分からないところからのスタート。野菜は試行錯誤しながら何とか商品化できましたが、果物については切り方も凍結方法も分からず、頭を抱えていました。そこでデイブレイクさんに相談し、先行して冷凍フルーツ加工に取り組んでいたPOPLABさんを紹介していただきました。研修を受け、プロジェクトとして一緒にやろうと声をかけていただいたことが、グループ参画のきっかけです。参画していなければ商品化まで辿り着けなかったと思います。見栄えや凍結後の品質改善、県外販路の開拓まで一緒に取り組める点は、とても心強いです。

冷凍技術で、香川の果物を全国へ

ーーーー今後の展望を教えてください。

冷凍事業はまだ始まったばかりで、売上規模としては、これからさらに伸ばしていきたい段階。まずは製造・販売を着実に積み上げながら、扱う県内農産物の幅を広げていきたいと考えています。「さぬきひめ」をはじめとした香川県産フルーツの美味しさを知ってもらうため、県主催イベントや香川・岡山共同の「食の大博覧会」などにも出展し、認知拡大に取り組んでいます。

また、現在の加工場では製造量が貯蔵可能分に限られるため、卸先ニーズの高まりを受け、将来的には施設規模や冷凍・冷蔵庫の拡張も視野に入れています。冷凍技術を通じて、香川の農産物を美味しいまま、より遠くへ届け、生産者の営みを支える持続的な流通につなげていきたいです。

プロフィール

  • 会社名:香川県農業協同組合
  • 所在地:香川県
  • 事業内容:香川県内の農産物の集荷・販売、他

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