2025.12.11 導入事例

テレビ出演で1日1000万円売り上げる煮かつサンドの人気店ROMANが挑む個人店戦略

冷凍技術を武器に、自分たちの味を本当に届けたい人へ。価値を感じてもらえるパートナーに絞る選択を

長年、八王子で愛されてきた「ROMAN」。名物の冷凍「煮かつサンド」を求める多くのファンを獲得し、テレビにも定期的に取り上げられる人気店です。そのROMANが2026年春、拠点を横浜へ移し新たなスタートを切ることを決意。10年以上走り続けてきたROMANが、初めて少し立ち止まる時間を持ちながら、新しい夢に向かって準備を進めています。八王子で生まれた煮かつサンドのROMANが、アートロックフリーザーという武器とともに、横浜でどんな物語を紡いでいくのか。これまでの歩み、液体凍結からアートロックフリーザーに切り替えた理由、そしてこれからのROMANについて、代表の高木慎二氏に伺いました。

煮かつサンドを全国へ届ける目標が、冷凍技術との出会いに

ーーーー改めて、冷凍事業を始められたきっかけを教えてください。

「煮かつサンドをもっと多くの人に知ってほしい」と思ったときに、全国へ届ける手段として冷凍に目を向けました。当時(2014年ごろ)は、今のように急速冷凍が知られていたわけではなく、サンドイッチを冷凍するなんて誰も考えていなかった時代です。調べていくうちに急速冷凍の技術を知り、デイブレイクさんで比較テストを受けたときに、美味しいまま冷凍できることに驚きました。

その後、補助金を活用して液体式の冷凍機を導入。当時、小さな個人店が「ものづくり補助金」に採択されることはほとんどありませんでしたが、先代から続く店のストーリーも含めて評価していただけたのだと思います。ちょうど同じタイミングで八王子の手土産グランプリも受賞して、周りから背中を押してもらっている流れを感じました。

液体冷凍からアートロックへ。安心・安全のために踏み切った転換

ーーーーアルコール凍結からアートロックへ切り替えた理由は?

最初に冷凍機を導入したときは、肉の身の締まり方が良かったことから液体式の急速冷凍機を選びました。ただ、液体凍結は超低温のアルコールに漬けて凍らせる仕組みなので、「商品にアルコールが入ってしまうのでは」という不安がずっとありました。ある日、お客様から「苦い味がする」と言われたときは、「ついにきた」という気持ちでしたね。それからは、真空した煮かつサンドをフリーザーバッグに入れてから凍らせるなどできる限りの対策をしましたが、冷たいアルコールから商品を取り出す作業は手がかじかむし手間が多い。コスト面でもアルコール補充の費用や、稼働時間の長さに伴う電気代が重くのしかかってきて、安全で効率のいい方法に切り替えたいという思いが強くなっていきました。

それらの背景があって、3年ほど前に空冷式のアートロックフリーザーへ切り替えました。実際に使ってみて、とても良い判断だったと感じています。品質は液体式のときと変わらず美味しい。そのうえで、安心して提供できるようになったことが大きいです。作業効率が上がっただけでなく、精神的な負担も軽くなりました。

ーーーー凍結にかかる時間や作り方のこだわりを教えてください。

煮かつサンドの凍結時間はおよそ1時間。1回で約70個入るので、注文が多い日は1日に8回転まわすこともあります(約560個)。揚げたあとに粗熱を取り、タレに漬けてパンと合わせてから凍結するのですが、かつの冷まし具合で仕上がりが大きく変わります。特にロースはその差が大きく、完全に冷めてから凍らせるより、揚げたてをタレにくぐらせて少しだけ粗熱を取った状態で凍結したほうが、解凍後に脂の甘さが残りジューシーで美味しい。部位によっても仕上がりが異なるので、永遠の課題です。

ロースがうまく仕上がったときの旨味は格別で、固定ファンがいるほど。食の好みは十人十色ですから、万人受けだけを狙うとどうしても無難になってしまいます。自分たちの味を好きだと言ってくれるファンを増やしていきたいです。

ECと卸の戦略。薄利多売ではやれない商品だからこそ慎重に

ーーーー販売チャネルの割合や方針について教えてください。
これまでは、小売店さんへの卸が中心で、置いてくれるところには積極的に出していくスタンスでした。でも今後は、「ブランドにとって意味のある小売」に絞っていくつもりです。うちの商品は薄利多売で売れるものではありませんし、大量生産すればするほど利益率が上がるような商品でもない。これまでは、とにかく求められれば必死に作って卸していましたが、それでは製造側が疲弊してしまいます。

だからこそ、商品の品質やブランド価値に見合った価格で販売し、それでも食べたいと思ってくださる方にしっかり届けていきたい。テレビに取り上げられた日には、1日で1000万円分の注文が入り、製造キャパの問題で途中でストップしましたが、止めなければさらに注文は増えていました。卸に加えて自社ECも並行しながら、ブランドをどう展開していくかを改めて考える時期に来ていると感じています。これまでは作ることに精一杯で、戦略を持てていませんでした。これからは自分たちの商品や規模に合った形で、無理なく、でもしっかりと価値を届けられるブランドづくりに取り組んでいきたいです。

「実店舗の延長線」で広がる煮かつサンドの世界

ーーーー「意味のある小売」は、例えばどんな販売をイメージされているのですか。

デイブレイクさんからのご紹介を機にダイエー三宮店で取り組んでくれている解凍販売は、理想的な形だと感じます。店内のカフェメニューとして採用していただき、こちらからは冷凍の状態で納品。店舗では解凍器で加熱して提供してくれているのですが、ダイエーさん独自のアレンジで、香ばしく焼き目をつけて出してくれています。うちでは推奨していない焼き目のアレンジが好評らしく、嬉しい驚きでした。問屋さんを挟んで単純に卸すだけだと、こちらの手を離れた後にどう扱われているのか見えにくいところがあります。ダイエーさんのように実店舗の延長線上にあって、お客様の反応がちゃんと見える売り方は本当にありがたいです。

小売以外でも、調理スペースのないビジネスホテルの朝食で提供していただいている事例があり、お客様から好評です。「喜んでくれるお客様の顔が浮かぶ」モデルは、やっていて社会的意義を感じますし、積極的に取り入れたいと思っています。インバウンド需要が増えるなかで、人手不足に悩む宿泊施設には相性が良いと考えて、提案しています。商品の価値がきちんと伝わって、さらに価値が上がっていくようなシーンで、一つひとつ丁寧に売っていくことが、これからの目標です。

横浜への移転を決意。ロマンの物語は、これからも続く

ーー横浜への移転を決めた理由を教えてください。

以前、横浜の音楽専門学校で講師をしていた時から、街の魅力にずっと惹かれていました。異国情緒があふれていて、刺激的で居心地がいい。昔から「ここに住みたい」と思っていたこともあって、決心しました。それからは話がどんどん進み、冷凍事業を始めた2014年の頃のように、今度は横浜の方々が後押ししてくれたんです。うちは、店名の「ROMAN」の通り、いつもドラマがあって、困ったときに手を差し伸べてくれる人がいる。そういう幸せを実感するとともに、しっかり恩返ししていかないといけないなと思います。

冷凍が生んだ成長。販路拡大、コストカット。冷凍の武器は大きい

ーーーー売り上げの変化はありましたか。

急速冷凍機を導入して小売店への卸が可能になってから、売り上げはテイクアウト中心だった頃と比べて100倍以上に伸びました。当時はもともと売上自体が小さかったので百倍といっても絶対額としては大きくありませんが、確実に伸びている実感があります。現在では、売上の8割以上が冷凍での販売で、常温のテイクアウトは2割以下。冷凍があることで販路拡大が可能になっただけでなく、日々のコスト削減にもつながっています。冷凍という武器は大きな存在です。

ーーーー挑戦してみたい新商品は?

お店で昔大人気だった「煮かつカレー」です!煮かつと、スパイスの効いたカレーが合わさって絶妙で、実は煮かつサンドよりファンが多かったくらいでした。新店舗ができたら、冷凍を解凍して提供するデリバリー展開を視野に入れています。アートロックがあれば解凍後にご飯もふっくら仕上がるので、期待のメニューです。新店舗作りと並行して、商品開発にもまた力を入れていきます。

こだわりの一品を届けたい人に届ける。個人店が選ぶこれからの冷凍活用の戦略

これまで10年以上、冷凍技術とともに走り続けてきました。確かに販路は広がり、売り上げは伸びましたが、同時に、闇雲に作り続け、どこにでも売ればいいというものではないことも学びました。これから先は、自分たちのような小規模な店が、冷凍という武器をどう活かして売っていくか。「自社の販売でどれだけ利益率を上げられるか」という原点に立ち返る時だと思っています。アートロックフリーザーは、まさに「ここでしか食べられない味」を再現できる技術。それを最大限に活用して、自分たちの商品を本当に食べたいと思ってくれる人にお店本来の味を届けていくことが、横浜に移転してから私たちが目指す次のステージです。

プロフィール

  • 事業社:R-circle 株式会社
  • 所在地:東京都
  • 代表:代表取締役 高木慎二