2026.10.28 セミナー プレスリリース 研究レポート

【開催レポート】熊本・ふく成の取り組みを現場から学ぶ、養殖×急速冷凍で広がる、魚の価値とこれからの養殖経営

2026年10月2日、デイブレイクは、株式会社ふく成の協力のもと、養殖×急速冷凍の現地視察セミナーを開催しました。気候変動や赤潮、飼料価格の高騰など、厳しい環境変化に直面する中、これからの養殖経営には、魚を育てるだけでなく、品質を保ちながら付加価値を高め、販路につなげていく視点が求められています。本セミナーは、こうした課題に対し、冷凍技術が養殖業の新たな可能性を開拓する手段となり得ることを認識する機会となりました。

なお、今回は台風の影響により、予定していた養殖場の現地視察を中止し、熊本市内の加工場見学と試食を実施。当日は、真鯛の加工工程や特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を活用した商品づくりを見学するとともに、株式会社ふく成 取締役 平尾有希様から、養殖場の様子や事業への思いについても写真を交えてご紹介いただきました。

養殖から加工、商品開発、販路開拓まで。ふく成が取り組む6次化

熊本県天草市の離島・御所浦で真鯛やトラフグの養殖を手がけるふく成。養殖から加工、商品開発、販売までを一貫して行い、魚そのものの品質を高めるだけでなく、その価値を消費者や飲食店へ届けるための仕組みづくりにも取り組んでいます。

養殖場の紹介では、長年にわたり養殖を続けてきた会長や親族の経験が、現在の生産を支えていることが語られました。一方で、かつては多くの養殖事業者がいた地域でも、現在は事業者数が大きく減少。限られた人員で多くの生け簀を管理するなど、養殖業を取り巻く環境の厳しさも伝えられました。

こうした状況の中で、ふく成が大切にしているのは、魚の状態や潮の流れを見極めた養殖です。餌についても、魚の成長段階やその日の状態に合わせて配合を工夫し、手間をかけながら育てています。

また、赤潮による被害を経験したことから、従来と同じ魚を同じ時期に育てるだけでは、環境の変化に対応しきれないという課題も生まれました。そこで新たに取り組んでいるのが、サクラマスの養殖です。赤潮などの環境リスクへの対応に加え、魚種と出荷時期を多様化することで、年間を通じた収益機会の創出と持続可能な養殖経営を目指しています。

鮮度と品質を守るための工夫。真鯛の加工現場を見学

続いて、ふく成の加工場を見学しました。養殖場から運ばれた真鯛は、品質を保つため、魚体をまっすぐにして一匹ずつ丁寧に並べて輸送します。加工場では、鱗や内臓を取り除き、三枚おろしにするまでの工程を見学。真鯛の身は厚みがあり、断面が飴色を帯びているのも特徴です。旨味やコクにつながる品質の特徴として紹介しました。さらに、加工工程で生まれる未利用部位についても、食品やレザー製品などへのアップサイクルを通じ、新たな価値を生み出す商品開発に取り組んでいます。

アートロックフリーザーを活用し、多彩な商品を開発

加工場では、アートロックフリーザーを活用した商品づくりについてご紹介いただきました。ふく成では、デイブレイクとともに試行錯誤を重ね、冷凍後も魚の品質を保つための加工方法を研究してきました。それらのノウハウを活かし、魚種や商品特性に合わせた独自の品質設計と冷凍技術により、高品質な商品づくりに取り組んでいます。凍結だけでなく、保管環境も徹底し、細かな工程の積み重ねが、商品を届けるまでの品質維持につながっています。

当日は、刺身に加え、真鯛の炙り、ごま醤油漬け、真鯛100%のカツ、真鯛をのせたピザなど、多彩な商品も紹介されました。炙りや燻製など、香りを付けた商品も香りごと閉じ込めて届けられることや、魚が苦手な子どもにも食べてもらえる商品を目指し、スタッフの声を取り入れて開発したことなど、商品づくりの背景も語られました。これらの商品は、小売店やECでの販売に加え、スーパーやホテル、飲食店など、さまざまな販路で活用されています。

刺身を食べ比べ。冷凍だからこそ生まれる価値とは

セミナーの最後には、捌きたての真鯛と、アートロックフリーザーで冷凍・解凍した真鯛の刺身の食べ比べを実施。参加者からは、冷凍・解凍した刺身について、食べやすさや旨味を評価する声も寄せられました。冷凍技術を活用することで、単に鮮度を保つだけでなく、魚の新たな魅力を引き出せる可能性が見えてきました。

ふく成が冷凍商品を開発する背景には、取引先が抱える課題もあります。飲食店では、人手不足や働き方改革への対応が求められるほか、予約のキャンセルや急な来客による食品ロスも課題となっています。必要なときに解凍して使える商品であれば、仕込みの負担を軽減しながら、急な注文にも対応しやすくなります。生鮮品と比べて商品化にかかるコストは増えるものの、食品ロスの削減や機会損失の防止まで含めて考えると、事業全体の効率化につながる可能性があります。

冷凍技術を起点に、養殖業の新たな可能性を切り拓く

今回の視察を通じて見えてきたのは、養殖業の課題解決には、生産現場の工夫だけでなく、加工・商品開発・流通・販売までを一体で考えることの重要性でした。ふく成では、養殖から加工、品質設計、販売までを一貫して最適化することで、魚本来の価値を最大限に引き出し、持続可能な水産業の実現を目指しています。

冷凍技術は、品質を保つための手段にとどまらず、魚を届ける先や販売方法、さらには養殖経営そのものの可能性を広げる技術でもあります。今回の視察を通じて、その可能性を改めて実感する機会となりました。

デイブレイクは今後も、生産者や食品事業者の皆さまとともに、冷凍技術を活用した課題解決や、新たな食のビジネスモデルの創出を目指してまいります。