2025.04.24 EVENT REPORT

必要な時に、できたての味を。スーパーの売場を進化させる冷凍×解凍の技術力

4月9日から11日に開催された「エフピコフェア2025」において、株式会社ダイエー、デイブレイク株式会社、フジッコNEWデリカ株式会社の三社が一堂に会し、冷凍技術がもたらす小売業界への進化について意見を交わしました。本レポートでは、その対談から浮かび上がった、冷凍活用の現状と今後の展望をお届けします。

タイムリーな商品提供を実現。ダイエーの新しい冷凍×解凍の販売モデル

ーーー現在ダイエー取り組まれている冷凍事業と新たな取り組みについて

(株式会社ダイエー 事業部長 小林秀峰氏)

現在、ダイエーでは特殊冷凍技術を活用した冷凍商品シリーズ「冷凍dai革命」を全国33店舗(2025年4月15日現在)で展開しており、今後さらなる店舗拡大を計画中です。販売実績は年間37万パックに達しており、今年は50万パック規模への拡大を見込んでいます。取り扱い品目は130種類以上にのぼり、惣菜、ベーカリー、フルーツから精肉まで多岐にわたります。

冷凍食品の可能性が広がりつつある今、ダイエーが新たに挑んでいるのは、必要な時に解凍して販売する新しい提供スタイルです。これまでのように冷凍状態のまま販売するだけではなく、店舗側で適時適切に解凍したうえで店頭に並べる。調理負担がなく、味も品質も最適な状態の商品をタイムリーに提供できます。

この取組みのまずはじめの展開が、「にぎり寿司の解凍販売」です。一般的に寿司は朝に調理するため、夕方~夜になると変色や劣化がすすみ、夕方や夜の時間帯に美味しいお寿司が並ぶことは難しい。ライフスタイルが多様化する中、開店直後から必要な時にいつでも鮮度の高い寿司が提供できる仕組みを作ることができれば、お客様に喜んでいただくことができます。価値提供ができる象徴的な商品として、まずは寿司からスタートしました。関西の店舗で試験販売が始まっており、本格展開を見据えた検証を進めています。

ダイエーの寿司売場。寿司売場の一区画にて、必要な時間帯において、解凍寿司を展開している
ダイエーが展開する解凍寿司

「にぎり寿司の解凍販売」は、専門技術を必要とせず、アルバイトスタッフでも安定した品質で商品提供が可能です。ただし、このモデルの成功には、各プロセスにおける技術の連携が欠かせません。高鮮度での冷凍技術はもちろん、解凍時の食感や風味を最大限に引き出すためには、Panasonic社と適切な解凍方法を検証し、運用を行ったマイクロ波の解凍機が不可欠。加えて、輸送中の破損や異物混入を防ぎつつ、高品質な解凍に対応可能な耐熱・耐冷容器の確保も重要な要素です。これを支えているのが、今回の展示会を主催するエフピコの特殊容器であり、冷凍・解凍プロセスを通して商品品質を保つための要となっています。さらに、この度ダイエーが解凍販売する寿司は、解凍時の味にこだわり、解凍後に酢の風味や香りを損なわない解凍レシピを開発しました。

このように、製造・冷凍・解凍・容器、そして小売の各プレイヤーが高い精度で連携することで、これまでにない高付加価値の商品提供が可能になります。

フジッコNEWデリカによる製造現場の課題解決アプローチ

ーーー食品メーカーの視点から、冷凍技術を今後どのような可能性を感じているか

(フジッコ NEWデリカ株式会社 取締役シニアエグゼクティブオフィサー 籠谷 一徳氏)

冷凍技術の導入により、食品製造現場の人手不足、食品ロス、人件費高騰の解決が見込めます。すでに和菓子(大福・おはぎ)のダイエー様への冷凍供給が進んでおり、今後は主力の惣菜キットにも応用する構想です。冷凍でストックできるようにすることで、需要変動にも対応できるようになります。スーパーのバックヤードの作業負担軽減と品質の安定をどこまで実現できるか。大手の冷凍食品メーカーにはできない領域まで発展させることを目指し、冷凍を研究しています。

フジッコNEWデリカが展開する冷凍おはぎ、大福
左からデイブレイク株式会社 代表取締役 木下昌之、株式会社ダイエー 代表取締役社長 西峠泰男様、フジッコ NEWデリカ株式会社 取締役シニアエグゼクティブオフィサー 籠谷 一徳様、株式会社ダイエー 事業部長 小林秀峰様、株式会社エフピコ 執行役員 マーケティング部ジェネラルマネージャー 前田知司様

冷凍品質を最大化するには、冷凍技術だけでなくレシピ開発と解凍技術の掛け算が不可欠

ーーー冷凍技術の進化と冷凍需要の変化について

(デイブレイク株式会社 代表取締役 木下昌之)

デイブレイクのアートロックフリーザーは、従来の「強風で冷却する」急速冷凍とは異なり、流体熱力学に基づいた優しい気流によって食材へ与えるダメージを抑え、食材の品質を保持する技術です。お寿司やスイーツなどデンプン質のものに特に影響があり、相性がいいことがわかってます。また、冷凍品質を最大化するには、召し上がるシーンを想定したレシピ開発と解凍技術の掛け算が不可欠。素材の仕入れ段階から、冷凍・解凍プロセス、容器設計まで一気通貫で企業が連携することにより、冷凍食品の価値は高まります。

人手不足の解消や簡単調理はこれから世界的なトレンドになってくると予想されており、冷凍技術を活用する顧客の層は最近変化し、小売業界への導入の割合が増えています。加工度が高い商品の冷凍もできるので、お寿司はまさにその典型的な食品です。冷凍すると美味しくなるという概念がまだまだあるので、ダイエー様が取り組まれている高品質冷凍商品がイノベーションを起こすことを期待しています。

ダイエーの今後の戦略。センターでの集中製造と小型店舗へのスケール

ーーーダイエーの今後の展望・戦略について

(株式会社ダイエー 代表取締役社長 西峠泰男氏)

冷凍技術や解凍技術の進化によって、お惣菜やお寿司のできたて商品を、冷凍技術を活かしてタイムリーにいつでも提供できるようになりました。天候などによる波動は大きく、食品ロスが発生することもありますし、反対に品切れしたりとかチャンスロスもあります。それらの「ロス」の課題に対して、タイムリーに提供できるようになったことは大きな進歩です。技術進化と工程の最適化によってお客さまに作り立てと同じ品質の商品提供が実現できるようになり、今後また新しい展望が見えてきました。

今後、ダイエーが注力する一つのテーマは、小型店舗の冷凍 / 解凍商品の導入です。従来、厨房設備が必要だった惣菜販売を、解凍と盛り付けのみで成立させる新しいモデルによって、限られたスペースでも大型店と同等の商品ラインナップを実現可能にします。また、集中製造型のセンターを設け、複数店舗への供給を行うマイクロPCセンターも稼働を開始。店舗の負荷を抑えつつ、高品質商品の安定供給体制を整えています。店舗がほしいときに、ちょうどよく商品を供給できる。その柔軟性が、次世代の商売の鍵になります。

左からデイブレイク株式会社 代表取締役 木下昌之、株式会社ダイエー 代表取締役社長 西峠泰男様、株式会社ダイエー 事業部長 小林秀峰様

ダイエーをはじめとする企業連携によって製造から販売までをつなぐこの取り組みは、小売の売り場を変え、これまでにないおいしさを提供します。時間が経っても、家庭で温め直しても美味しく食べられる──そんな商品が消費者の食生活に豊かさをもたらし、冷凍が保存のためだけでなく、選ばれる味を届けるための手段として進化を遂げることを目指し、デイブレイクはこれからも技術革新に挑み続けます。