岩手県で「打ちたて・切りたて・茹でたて」にこだわる「うどん工房 かたつむり」。同店では、特殊冷凍機アートロックフリーザーを活用し、冷凍うどんの展開を進めています。導入は補助金申請のために描いたストーリーから始まり、約1年間電源すら入れなかった冷凍機。それが今では、ロス削減、売上拡大、さらには回転率向上にまでつながっています。導入背景から成果、今後の展望まで、代表の上月和子様に伺いました。
ーーーーアートロックフリーザー導入の背景を教えてください。
事業再構築補助金を申請するための「ストーリー作り」がきっかけでした。もともと欲しかったのは製麺機と茹で麺機でしたが、補助金は新規事業でないと採択されにくい。そこで「うどん屋が冷凍うどんを販売する新事業を始める」という名目で申請しました。無事に採択されたものの、当時の優先事項はあくまで製麺機と茹で麺機。急速冷凍機は導入したものの、実際には約1年間スイッチすら入れていませんでした。
ーーーー冷凍うどんの製品化を始めたきっかけは何だったのでしょうか。
補助金の報告義務があり、試しに作ってみたのが始まりです。アートロックで凍らせたうどんをお湯で戻して食べてみたら、店のうどんと遜色がなく、試作を重ねたわけでもない一発目でこのクオリティはすごい!と驚きました。「研究すれば、もっと可能性が広がるのではないか」と感じたことをきっかけに、本格的な商品開発に着手。他社の冷凍うどん工場を見学したり、通販の冷凍うどんを取り寄せて食べ比べたりしながら、補助金のための構想が、次第に育てたい事業へと変わっていきました。
ーーーー販売はどのように広げていったのですか。
最初は店内の冷凍庫に並べて販売しました。すると並べたそばから売れてしまう状態になり、さらに「営業時間外にも買いたい」という声が多く寄せられました。そこで、2年目に冷凍自販機を導入。今では、冷凍自販機だけで、秋から春先にかけては1日20個、月商約60万円を売り上げます。夏場は持ち帰り中の溶けリスクもあり月20〜30万円程度ですが、お中元やお歳暮の時期には一度に10個単位で購入する方もいらっしゃいます。
ラインナップは、カレーうどん20個、かけうどん20個、明太クリーム10個の計50個。それぞれにファンが付き、均等に売れています。補充は1日1回。朝出勤後すぐに在庫と売上を確認し、補充するのが日課です。


ーーーー冷凍商品用にレシピは変えていますか。
レシピや茹で方は変えていません。お店とまったく同じ作り方です。基本的には、営業中に出なかった麺を冷凍に回しています。うどんは茹で上がるまで16〜17分かかります。注文後に茹で始めれば提供は約20分後。「遅い」と感じさせないためには、来店を信じて先に茹でるしかありません。しかし、お客様が来なければ廃棄せざるを得ない。一方で、来店しないことを恐れて茹でなければ、今度は提供が遅くなる。世の中のうどん屋は、きっと同じ悩みを抱えていると思います。

しかし、冷凍を導入したことで、お客様が来なかった場合は茹でたうどんをそのまま冷凍に回し、すべて商品化できるようになりました。その日のうちにすぐ冷凍すれば鮮度もよく、茹でたての味を再現できます。かつては毎日45リットル近く出ていた廃棄量が、今では1/10以下の200〜300g程度に。その結果、原価率は約35%から32%へと改善しました。
また、ロスを気にせず茹でられるようになったことで、回転率も大きく向上しました。うちの店は、朝にまとめて仕込むのではなく、15分後、20分後にお客様がいらっしゃることを信じて、常に打ち、切り、茹で続けています。以前は、ロスを恐れて茹でる量を少し抑えてしまうこともありました。しかし今は、万が一お客様が来なかった場合でも冷凍に回せます。その安心感があることで、迷いなく先行調理ができるようになりました。

その結果、お客様が来店された時には常にうどんが用意されている状態を保ち、来店からわずか1分で提供できる体制が整いました。「お客様が来ないかもしれない」と心配して茹でる手を緩め、茹で上がりが7分後、8分後になってしまえば、回転率は大きく変わってしまいます。飲食店は客席数で売上の上限が決まりますが、ほとんど限界まで回転率が上がり、店内飲食の売上は約1.2倍に伸びました。提供の早さは顧客体験の向上にもつながっています。「並んでいても回転が早い」と評価していただけるようになり、「待つのが嫌だから」とあきらめて帰ってしまうお客様もいなくなりました。
ーーーー出汁やカレーはどのように冷凍していますか。
まず出汁を先に凍らせ、その上に麺を載せて、さらに凍らせます。下が出汁、上が麺の2層構造です。鍋で下から加熱すると、徐々に出汁が溶けていくため、麺が必要以上に煮込まれることがなく、伸びずに仕上がります。凍結時間は、出汁が約40分、麺は15〜20分ほど。麺は茹で上げた後に氷水で締めてから凍結するため、短時間で凍ります。


看板メニューのカレーうどんは、鍋に移して火にかけ、約10分温めるだけで店と変わらない味わいに。冬限定の鍋焼きうどんは、1kg近いボリュームの豪華仕様で、アルミ鍋ごと強火で15〜16分加熱すれば完成します。具材も冷凍による品質劣化はほとんどありません。海老天やかまぼこ、ネギも問題なく、きのこはむしろ冷凍によって旨味が引き出される印象です。白菜だけやや食感が変わるものの、出汁と合わせればほとんど違和感がありません。鍋焼きうどんは、店頭では約1か月の提供ですが、冷凍では2か月販売しています。「店ではもう終わってしまったけれど、冷凍ならまだ買える」期間があり、この商品を心待ちにしてくださるお客様がいるほどの人気商品です。

ーーーー今後の展望を教えてください。
自販機の増設のお声もいただいていますが、スーパーや岩手県のアンテナショップへの卸、EC展開に関心があります。お中元やお歳暮などのギフトとして「贈りたい」という声は、実は2年以上前から寄せられていました。そうしたご要望を受け、現在はECサイトの開設を準備中です。店内リーフレットの設置や、SNSと連動した告知なども計画しています。
一方で、販売量が増えれば、人員体制の整備も必要です。もし本格的に展開するのであれば、冷凍専門のセントラルキッチン兼店舗のような拠点をつくり、そこで製造を行いながら自販機を設置し、店内飲食もできる形にするような構想も描いています。
補助金申請のために導入し、約1年間眠っていた冷凍機が、今では廃棄削減や売上創出・回転率向上を支える存在になっています。「お客様が来ることを信じて茹でる」といううどん屋の覚悟を無駄にしない仕組みを、冷凍で築くことができました。この先どこまで展開していくか。地域に根ざした広がりを、考えていきたいと思います。
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