富山県朝日町の港町で、漁師として第二の人生を歩む「聖徳丸」代表徳田聖一郎氏。元会社員から漁師へ転身し、漁獲・加工・販売まで手掛けています。昨年アートロックフリーザーを導入し、従来は生やボイル中心だったカニ販売を、品質を保った冷凍販売へとシフト。安定供給を実現した結果、売上は約2倍に伸び、今年はさらに拡大を目指すといいます。冷凍技術が支える漁業の新たな経営モデルについて、「聖徳丸」の徳田氏に伺いました。
ーーーー聖徳丸様の取り組みについて教えてください。
富山県朝日町で漁業を営む漁師です。自分で漁獲または仕入れた魚やカニ、牡蠣などを加工し、主に産直サイトやふるさと納税の返礼品として販売しています。私は愛知県豊田市出身で、もともとは漁師とは全く畑違いの自動車関連の品質管理の仕事をしていました。30歳の時に「このままやりがいを感じないままでいいのか」と考え、昔から関心があった漁師になることを決意。地域おこし協力隊に応募し、3年間全国各地で漁業体験を重ねながら「自分が本当にやりたい漁業」を探し続けました。
そして、最後にたどり着いたのが富山県の朝日町です。県内でも小さな漁港ながら、漁師自身がとった魚を直接販売できる仕組みが整っており、「自分の手でとり、自分の手で美味しいものを届ける」という理想のスタイルが実現できることに魅力を感じ、ここで独立して漁師としての道を歩み始めました。

最初は市場への出荷が中心でしたが、コロナ禍を機に「食べチョク」などの産直サイトを活用し、直販に軸足を移しはじめました。外食の機会が減り、「自宅で取り寄せて楽しむ」というスタイルが定着したことで、注文が急増。リピーターのお客様も増えていきました。自分の獲った魚やカニを直接お客様に届けることができ、「美味しかった」「また頼みたい」という声が届くと励みになります。
ーーーーアートロックフリーザーを導入された背景を教えてください。
導入したのは2024年11月です。それまでは-60℃の保管庫を使っていましたが、あくまで保管用で「美味しく凍らせる」機能はありませんでした。冷凍の主力であるカニは、需要が年末に集中し、価格も2倍3倍に高騰します。その反面、在庫が確保できないと販売機会を逃してしまう。この機会ロスを解消するには冷凍しかないと考え、さまざまな冷凍機を比較。品質とサポートの両面で信頼できると感じたデイブレイクのアートロックフリーザーを導入しました。
ーーーーアートロックフリーザーを選んだ理由は?
液体凍結なども検討しましたが、真空処理の手間や、扱える食材の幅を考えると、私の現場には合いませんでした。アートロックは食材を選ばず使え、オペレーションがシンプル。決め手は、デイブレイクさんが「冷凍の専門家」であること。凍結だけでなく、保管・流通・パッケージングまでトータルに相談できる安心感がありました。冷凍後の鮮度保持や色味も非常に良く、品質面でも満足しています。

ーーーー冷凍機はどのように活用されていますか
魚や貝類など様々な魚介を加工販売していますが、冷凍の主力はカニです。ベニズワイガニとホンズワイガニを扱っており、11月の解禁直後に仕入れたものを冷凍ストックし、年末に販売。比較的購入しやすく価格が安い時期に確保しておけるので、安定した販売が可能になりました。
冷凍方法は、姿のまま一時間ほどで凍結し、60%の真空パック。生とボイルの両方に対応しています。これまで約8割が生またはボイルでの出荷でしたが、導入後は逆転し、8割が冷凍商品に。お客様からも「好きなタイミングで食べられる」「年末に確実に届くのがありがたい」と好評です。冷凍の方がむしろ喜ばれているように感じます。

ーーーー富山のカニにはどんな特徴がありますか。
富山湾はすぐに深くなる地形のため、漁場が港から近い。カニが生息する海域までの距離が短いので、鮮度の良い状態で持ち帰れるのが大きな強みです。カニの美味しさは鮮度に比例するため、できる限り早く処理し、冷凍加工することが重要。アートロックフリーザーを活用することで、鮮度を保ち解凍後もとれたてに近い品質を再現できるので、富山のカニの魅力をさらに引き出せていると感じます。

ーーーー導入後の効果はいかがですか。
売上は約2倍になりました。昨年は導入直後で準備期間が短かったのですが、今年は秋から仕込みを始めており、さらなる拡大を見込んでいます。昨シーズンは約500件の注文でしたが、今季は600~700件が目標です。年間売上の約6割を12~1月が占め、直販比率は7割以上。ふるさと納税や食べチョク経由で全国から注文が入っています。

ーーーー漁師になって感じることはありますか。
漁師になれたこと自体がまず幸運でした。地域によっては新規参入が難しく、受け入れてくれる場所は貴重です。また、会社員時代に培った管理やネット販売の知識が、直販やブランディングに活きています。漁業だけでなく、販売や情報発信を自分で行動できるのは強みだと感じます。
ーーーー今後の展望を教えてください。
漁業は天候や資源量に大きく左右される産業です。大量に獲れたときは価格が下落し、逆に不漁のときは供給が止まってしまう。いわゆる「大漁貧乏」と呼ばれる課題を抱えています。アートロックフリーザーを活用すれば、獲れすぎたときに冷凍ストックしておき、価格が落ち着いたタイミングで販売することができます。気候変動による漁獲量の減少が懸念される中で、資源を無駄にせず、価格を安定させる平準化の仕組みを築いていきたいと考えています。荒天で漁に出られない日もありますが、そんな時こそ加工や冷凍の仕込みに集中する。漁獲・加工・保管・販売という一連のサイクルを自分たちの手で組み立てることで、より持続可能な漁業の形を目指しています。
富山県朝日町の港町で、漁師として第二の人生を歩む「聖徳丸」代表徳田聖一郎氏。元会社員から漁師へ転身し、漁獲・加工・販売まで手掛けています。昨年アートロックフリーザーを導入し、従来は生やボイル中心だったカニ販売を、品質を保 […]
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