江戸時代から続く老舗・九重味淋がアートロックフリーザーを導入してから約3年、総菜、スイーツ、OEMまで多角的に事業を拡大しています。今年は念願の「冷凍おせち」を発売し、予約は即完売。老舗のみりん蔵が、なぜ冷凍に踏み込んだのか。そして、アートロックフリーザーがどのように事業を支えているのか。導入の背景から今後の展望まで、九重味淋株式会社の常務取締役 國松和夫様に伺いました。
ーーーーアートロックを導入されたきっかけを教えてください。
みりんは、料理をあまりしない人には価値が伝わりにくく、日常的に料理をする人でも、時短ニーズの高まりから便利な合わせ調味料を選ぶケースが増えています。即食を好む層に至っては、みりんとの接点自体がほとんどありません。そこで「私たち自身が、みりんの価値を活かしながら、すぐに食べられるものを提案すべきではないか」と考え、冷凍食品事業を立ち上げました。
アートロックフリーザーを導入してからは、冷凍商品のオンライン販売をスタート。現在ではラインナップが約20種類に増え、いずれも余計な着色料や保存料は使わず、素材とみりんの良さを活かした商品づくりを徹底しています。体に優しく、美味しいことが魅力となり、リピーターが増加。人気商品には「プチ丼シリーズ」や「どて煮」「もつ煮込み」があり、1品ずつ調理して冷凍保存したものを、注文に応じて組み合わせて発送しています。また、3年間の経験を通じて、保管温度帯による食品の変化などのノウハウも蓄積されました。


ーーーー冷凍商品の製造以外にも冷凍技術は活用されていますか。
通販用の冷凍商品製造以外でも、冷凍機は毎日フル稼働しています。例えば、レストランの定番メニューである「みりん角煮御膳」や「季節の魚もろみ漬け御膳」。角煮は仕込み段階で冷凍し、提供時は温めるだけにして、調理負担の軽減と提供時間の短縮に役立てています。さらに、レストランで気に入ったお客様がそのまま持ち帰れるよう、冷凍商品としても販売。レストランと土産店が隣接する立地を活かし、メニューと連動した販売導線を整えています。
付け合わせの副菜やレモネードシロップ、かき氷用クリームなども事前に調理して冷凍ストックしています。導入当初は、冷凍機の稼働の約半分がレストラン向けの仕込みでしたが、現在はEC・直売店向けの比率が高まり、売上構成もかつてはレストラン向け食材が7割を占めていたところ、今ではほぼ半々のバランスに変わりました。



ーーーー商品開発も積極的に行われているのですか。
社長の念願だった冷凍おせちを、ついに今年初めて商品化しました。おせちは市場競合が多く、差別化が難しい分野ですが、「砂糖を使わず、みりんだけで甘みをつける」という、みりん屋ならではの強みを前面に打ち出し、腸活に良いおせちとして提案しました。お試し用の100個は即完売。10月に開始した本販売の予約も、半月ほどで完売する人気ぶりでした。
使用する料理はすべてアートロックフリーザーで凍結。保管期間が長くても品質が変わらないものは早めに製造し、根菜など食感の変化が起こりやすい素材は出荷の2週間前に仕込みます。食品の特性に合わせて製造時期を調整し、最終的に組み合わせて完成させています。また、容器についても、デイブレイクファミリー会で繋がったアクタさんの協力により、本来のロット外の特別対応で手配してもらうことができました。

また、10月の「寺町ウォーキング」での蔵開きイベントでは、約60名の社員と取引先の皆さまに、ECで販売している冷凍惣菜を昼食として提供しました。いなり寿司、ブリトー、豚の角煮など。冷凍に関わらない社員には距離感がありましたが、「美味しい」と好評で、社内理解が進みました。実際に食べてもらうのが一番ですね。
ーーーー導入いただいて3年がたち、変化したことはありますか。
最近は「冷凍食品を売る」のではなく、「解凍して売る」という発想が広がってきていると感じています。デイブレイクさんの冷凍寿司も、現地でうまく解凍して、本格的な寿司を美味しく食べてもらうというコンセプトですよね。九重味淋でも、和菓子「みりん屋さんのお芋玉」を製造後に冷凍ストックし、解凍して販売しています。今年春から週末限定でテスト販売したところ評判が良く、今では毎日販売する人気商品に。脱酸素剤を入れると常温でも2週間持ち、扱いやすい商品になりました。
スイーツメーカーではないからこそ、九重味淋ならではの付加価値として打ち出しているのが、「砂糖を一切使わない」というこだわりです。日本料理の技法である「煮切り」を用い、みりんを半量ほど煮詰めると、シロップのような自然な甘みが生まれます。砂糖は体内で消化が必要ですが、みりんの主成分であるブドウ糖やオリゴ糖はそのまま吸収されるため、体に負担をかけません。腸にも優しく、腸活にも良い。美容と健康という普遍のニーズに応える商品として、今後もこのシリーズを広げていきたいと考えています。

ーーーーOEMの受託も進めているのですか。
今進行中の案件で、みりん・みりん粕を使用していただいている水産加工業者さんとコラボした「冷凍チーズケーキ」があります。業者さんの漬け込みかすを使ったチーズケーキを当社で製造・冷凍し、業者さんに納品して、解凍して店頭で販売されています。みりんかすを使ったチーズケーキを食べていただいたことがきっかけで、「うちの漬け込みかすでも作ってくれないか」とご依頼いただきました。

ーーーー今後の展望を教えてください。
冷凍事業は今後、会社の大きな柱にしていきたいと考えています。お砂糖を使わないスイーツシリーズや、解凍して販売できる商品も順次拡充し、販売店での展開も視野に入れています。ただし、販売店価格とEC価格のバランスは重要なので、そこを整理した上で積極的に販路を広げていきたいです。近年は高付加価値・高単価の商品を求める販売店も増えており、コンセプトが明確で魅力が伝われば、勝負できると期待しています。
また、デイブレイクのファミリー会には初期の頃から参加しており、冷凍事業の右も左も分からない状態から、多くのメンバーの方々に助けていただきました。横のつながりを通じて情報交換したり、新しい知見を得たりと非常に学びの多い場です。冷凍という未知の分野に挑戦する上で、このコミュニティは私たちにとって大きな支えとなっています。今後も交流の機会を大切にし、時には私たちが培ったノウハウも還元しながら、お互いの冷凍事業の発展につなげていきたいと考えています。

江戸時代から続く老舗・九重味淋がアートロックフリーザーを導入してから約3年、総菜、スイーツ、OEMまで多角的に事業を拡大しています。今年は念願の「冷凍おせち」を発売し、予約は即完売。老舗のみりん蔵が、なぜ冷凍に踏み込んだ […]
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