京都・京丹波町の特産品「京丹波栗」の焼き栗で毎年行列をつくる京丹波栗工房が、2025年夏に特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を導入しました。これまで9〜12月限定販売だった焼き栗を、鮮度をそのままに通年提供できる体制へ。さらに、冷凍栗ごはん、冷凍焼き栗など、素材の風味を最大限に活かした商品開発に挑戦し、大手百貨店や全国催事への展開を見据えています。冷凍技術がもたらす新しい栗ビジネスの可能性について、京丹波栗工房の若杉正明氏に伺いました。
ーーーーアートロックフリーザーを導入された背景を教えてください
これまでは栗を生で保存することしか考えていませんでした。業界では「冷凍は邪道」というイメージが強く、特に京丹波栗のように高級で繊細な素材ほど、冷凍は敬遠されがちでした。その考えを変える起点になったのは、観光客から日々寄せられる「持ち帰りたい」という声です。京丹波では毎年9月末から12月ごろまで、週末の道の駅で焼き栗を販売しており、1万人以上のお客様が訪れて1時間待ちは当たり前。お客様から「持ち帰りはできないのか」と何度も聞かれましたが、時間が経ってしまうと焼き栗の美味しさが維持できないため、その場で食べていただくほかありませんでした。
「アートロックフリーザーなら冷凍焼き栗を焼き立ての状態に戻せる」と聞き、実際に試すと本当に焼きたての風味を感じることができ衝撃を受けました。これならお持ち帰りを希望されるお客様への対応が可能となることから、アートロックフリーザーを導入することに決めました。
さらに驚いたのは、解凍後の品質保持効果です。アートロックで焼き栗を凍結し、25℃程度の常温で解凍すると、解凍後1週間品質が保たれることが確認できました。通常なら栗は1週間も放置しているとカビが生えてしまいますが、解凍後の栗を菌検査に出したところ、3日後、7日後ともに陰性でした。理由はまだ解明できておらず研究中の段階ですが、アートロックフリーザーで凍結することで賞味期限が延びることが明らかになりました。もっと面白いのは、冷凍後の方が甘みが増したと官能検査で感じられたこと。新しい栗の美味しさを発見しました。
ーーーー導入後の効果や期待していることを教えてください
9月から栗の収穫が始まり本格稼働するため結果が現れるのはそれ以降になりますが、大幅な業務効率化とロス削減の効果が期待されます。例えば栗ペーストの加工において、加工後に殺菌のため蒸し器にかけるのですが、出来上がりは熱々。それを冷やすのに氷水を使用して2時間以上かけて冷却していました。その後に一般的な冷凍庫で凍結していたので、総加工時間はおよそ半日。現場への負担も大きく、骨の折れる作業でした。アートロックなら粗熱取りと凍結が一度にでき、1〜2時間で完了するので、作業時間が⅙に短縮される想定です。さらに、冷却時間が短いと菌の再繁殖リスクが減り、安全性も高まります。
また、栗は加工が遅れると腐ったり乾燥したりして品質があっという間に劣化してしまいます。それを、採れた日に加工できない分は生栗のまま冷凍保存すれば、栗の収穫がない時期でもアートロックフリーザーで凍結した栗なら加工可能です。これによってロスが削減できる上に、通年販売が実現できます。品質も採れたての風味が再現される。この効果には大変期待しています。
ーーーー新商品開発も検討されているのですか
目玉にしたいのが「栗ごはん」です。栗ごはん、焼き栗、栗きんとんを冷凍で保管して、解凍して三段重に詰め合わせて提供するスタイル。作りたてのような香りと味を再現できるアートロックの強みを活かして、栗ごはんやおこわといった栗そのものを主役にした商品を展開していきたいと考えています。京都丹波の日本で一番の上質な栗は数量限定の「京丹波の栗ごはん」としてブランディングし、その他にも季節の山菜や黒豆を使用するなど、通年で多彩なおこわを展開していく構想です。栗は味が上品で、何かを混ぜるとその風味が損なわれやすい。だからこそ、素材の甘みや香りを感じられる商品を最上位に置き、栗ぼうろなど派生商品で幅広く京都丹波栗の商品ラインナップを進めていきます。
冷凍技術の導入で、加工が計画的に行えるようになったのも大きな変化です。これまでおこわ業界では、早朝3時〜4時からの仕込みが当たり前でした。体力的にも負担が大きく時代の働き方に合わず、消えていったブランドや会社も多い。その結果、「おこわ」は誰もが知るような確立されたブランドが存在しないのが現状です。だからこそ今が好機だと思っています。まとまった量を計画生産すれば製造現場に過度な負担をかけずに済み、卸先のオペレーションもストックした商品を解凍するだけです。
また、提供方法も従来の枠を超えたい。たとえば店頭に蒸し器を置き、その場で蒸し上げることで、立ちのぼる湯気と漂う香りがお客様を惹きつけるーーーそんな五感を刺激する販売スタイルを取り入れたいです。冷凍商品を冷凍のまま販売するのではなく、解凍してベストな状態で食べてもらう。さらに、単に味を届けるだけではなく、「栗ご飯を食べること」を記憶に残る体験にしたいと考えています。
百貨店や駅ナカ施設の催事で、冷凍栗ご飯やおこわの展開を計画中です。将来的には「栗ご飯・おこわ専門ブランド」を立ち上げ、全国に拡大したいです。
目指すのは単なる販売拡大ではありません。京丹波で実った栗が、焼きたての風味や香りをまとったまま日本全国の食卓に並ぶ。そんな光景を現実にしたいです。アートロックは鮮度を保つ「鮮度凍結」ができる機械。これを活かして、京丹波栗の魅力を一年中楽しめる仕組みをつくり、全国で愛される栗のブランドとして、お客様に届けることを目指します。
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