「食べたことのない食感」と話題を集める、パティスリー魔法庵のシフォンケーキ「モフォン」。オリジナル小麦の魅力である、しっとり・もっちりとした食感を全国に届けるために貢献したのが、アートロックフリーザーでした。コロナを機に卸業へと大きく舵を切り、デイブレイクファミリー会を通じて実現したダイエーでの展開。右肩上がりの成長を続ける冷凍スイーツ卸事業の軌跡を、パティスリー魔法庵を運営する株式会社助来の加藤氏に伺いました。
ーーーー冷凍スイーツに取り組み始めたきっかけを教えてください
魔法庵では、カフェの運営と並行して、スイーツやパンの製造・卸売、OEMを手がけており、最近では全国に冷凍スイーツをお届けする事業が主力です。もともと冷凍スイーツの卸に対応できる体制は整えていたものの、リソース不足で手を出せていませんでした。でもコロナを機に「卸に振り切ろう」と決断し、冷凍設備を導入。本格的に卸や催事販売、ECに取り組むようになりました。
ーーーーアートロックフリーザーの導入の決め手は何でしたか
看板商品のシフォンケーキ「モフォン」をはじめ、製造している全ての商品にアートロックフリーザーを使っています。魔法庵のシフォンケーキやパンは、「しっとり・もっちり」とした食感にこだわっているので、普通の冷凍や他の急速冷凍では、繊細な質感をどうしても損なってしまう部分がありました。
魔法庵が使っている小麦は、約5年かけて独自に開発した唯一無二のオリジナル品種です。試験栽培を繰り返して、安定して収穫できるようになるまでに3年以上かかりました。次に収穫した麦をどうやって製粉するか。小麦は粒度によって味や食感が全然違ってきます。粗いままだともちもちした食感が出にくいので、細かく砕ける製粉機を採用しました。
その唯一無二の小麦ならではの食感を冷凍でも再現しようとしましたが、通常の冷凍技術では限界がありました。しっとり感ともっちり感の両立はすごく難しくて、水分と一緒に食感が失われてしまいます。でもアートロックで試してみたら、焼きたてに限りなく近い食感を再現することに成功。圧倒的な差に驚き、他にはない技術だと感じました。
ーーーー現在、どのような卸先に提供していますか
卸売は、デイブレイクファミリー会のご縁で繋がったダイエーさんをはじめとする小売店やサービスエリアなど。最近では高級ホテルからもお声がけいただいています。三重県内でも、旅行会社から「地域で展開したい」とご相談をいただき、いくつかの販売拠点で取り扱っていただいています。三重県産の素材を使っているので、地元の方に食べてもらえるのは嬉しいですね。「食べたことのない食感だった」といった嬉しい感想を多くいただきます。
ダイエーさんでは、約1年前からイートインカフェで冷凍シフォンケーキを解凍して提供していただいていています。パナソニック社の最先端の解凍技術を使用して、お客様が注文されたタイミングでわずか数分で解凍され、まるで焼きたてのような状態で提供されるんです。我々も店舗まで食べに行きましたが、衝撃的でした。極端に言えば、店頭に並べているものよりも「解凍したて」の方が、焼きたての美味しさが再現されていて美味しい。高度な冷凍と解凍技術があってこその品質でした。
さらにその場で気に入っていただけたら、店頭で冷凍品を購入して持ち帰られるように物販もしていただいています。今では導入店舗も三店舗にまで拡大していただき、本当にありがたい限りです。
ダイエーさんは100店舗以上展開されていますから、最初は「まさかこんな展開になるとは」という驚きがありました。ただ、完全に手作りの我々が一気に全店展開するのは物理的に難しいこともご理解いただいて、商品の見た目などもダイエーさんと意見交換しながら、改良を重ねてきました。本来、三重県でしか食べられなかった商品が、関西で焼きたてクオリティで楽しめるというのは、これまでにない驚きと感動をもたらす体験です。
ダイエーでの販売実績は、3店舗の合計が毎月300個以上(イートン、物販合計)。同価格帯のスイーツの中でも売れ行きが好調な商品です。イートインカフェには、常連のお客様もいらっしゃるといいます。
ーーーー1日の製造量はどのくらいですか
OEMのドーナツを1日約1000個製造しています。その合間に、シフォンケーキや台湾カステラなども作り置きしていくという流れです。シフォンケーキは、受注が入ったタイミングに合わせて、カットしてクリームを挟んだ完成状態で1日1000個ほど一気に製造します。製造の工程自体はすべて手作りで、ドーナツをフライヤーで揚げている横で、同時にシフォンケーキを焼いているという感じです。
今魔法庵で扱っている商品はすべて冷凍。卸売商品だけでなく、店舗で販売しているケーキやカフェで提供しているスイーツも、すべてアートロックフリーザーで冷凍して作り置きし、提供時に解凍しています。ロスが出ない上に、焼きたての状態が再現できて、製造してから時間が経った常温品よりもおいしい。食べ比べてみるとびっくりしますね。毎回、「やっぱり違うよね」という話になります。ゼロから始めた事業なので「何倍に伸びました」とか具体的な数字で表現するのは難しいですが、冷凍卸はとにかく毎年、右肩上がりに伸び続けています。
ーーーーOEMの製造はどのように製造されていますか
現在は、ドーナツのOEMをさせていただいていて、お互いにないものを補い合っていけたらと、AIも活用しながら仕組みを見直しています。例えば、以前は前日に生地を仕込んで冷蔵庫に入れて、朝から揚げるという工程でしたが、それだと休みが取れずスタッフが疲弊してしまいます。そこで、レシピや製法自体は触れず、イーストの量だけを変えて、AIを使って適切な発酵時間を導き出したんです。私自身、パンやドーナツの発酵について詳しいわけではなく、むしろいい意味で素人だったので、先入観に囚われずに試せたのがよかったと思います。結果的に、製造量を変えずに週2回の休みを確保できるようになりました。
以前は人間の勘や知識、本やネットの情報に頼っていましたが、今はピンポイントでAIに聞くと水分量や発酵条件など細かいことまで提案してくれます。AIはあくまで補助ツールなので、現場でどういうシーンでその製法を使うのか、汎用性があるのかは人間の想像力や経験が必要ですが、レシピの開発やオペレーションの見直しには役立つと思います。
ーーーー今後の展望を教えてください
今後は、自社で開発した小麦粉を海外に販売していく事業を同時並行で進めていきたいと考えています。粉を輸出するときも、冷凍することで鮮度が保たれて、虫の発生を防げるので、一度冷凍をかけています。特に夏場は常温で長期間置くよりも安全です。品質だけでなく、安全面でも冷凍が大きく貢献しています。
小麦と冷凍の強みを活かした商品開発にも取り組んでいます。例えばお好み焼き。お好み焼きはもちもちでとろとろの食感が特徴ですが、配合を少し変えるだけで大きく味や食感が変わります。実は、店舗のカフェランチで提供しているのですが、そのお好み焼きを気に入ってリピーターになるお客様もいらっしゃいます。
アートロックフリーザーのおかげで、ここまで冷凍事業を大きく発展させることができました。本当に技術の力を実感していますし、品質を守りながら多くの方に届けられることが何より嬉しいです。また、ダイエーさんとの展開も、ファミリー会というご縁がなければ実現しなかったことです。これからも、冷凍技術と自社の小麦の強みを活かして新しい挑戦を続けて、多くの方に喜んでいただける商品をお届けしていきます。
「食べたことのない食感」と話題を集める、パティスリー魔法庵のシフォンケーキ「モフォン」。オリジナル小麦の魅力である、しっとり・もっちりとした食感を全国に届けるために貢献したのが、アートロックフリーザーでした。コロナを機に […]
米心石川は、日本の米文化を支える米飯企業です。伝統的なお米の販売だけでなく、炊飯部門を強化し、2022年から冷凍食品事業に本格参入。当初は緩慢冷凍での試験運用でしたが、さらなる品質向上と生産量拡大を目指し、最先端の特殊冷 […]
創業80年を超える老舗仲卸「山五商店」は、築地を拠点に全国各地から穴子や旬の魚を集め、大手ホテルや高級寿司店、天ぷら専門店へと鮮魚の卸事業を展開。特に「煮穴子」に定評があり、その質の高さと確かな目利きで、多くのプロの料理 […]