2025.05.23 INTERVIEW

デイブレイクラボが解説!冷凍技術を活用した「売れる商品開発」の基本戦略

冷凍技術を活用して「売れる商品」を開発するには、何を基準に考えるべきなのか。商品開発の現場において押さえておくべき基本的なポイントを、デイブレイクラボの富山が解説します。

冷凍商品の開発において押さえておくべき基本的なポイントは大きく分けて二つ。「どのようなターゲットにどんなシーンで食べてもらうのか」「その商品をどのように運用していくのか」。単なる技術活用にとどまらず、消費者との接点を具体的に描き出すことが、選ばれる商品づくりの鍵になります。

開発の第一歩は、「ターゲットがどのようなシーンでその商品を食べるのか」を想定することです。そして、そのシーンにおいてどのようなパッケージや解凍方法が最も適しているかを逆算して考えることで、商品に実用性が生まれます。冷凍は「美味しい状態で届けるための技術」。だからこそ、「食べる瞬間」から逆算した設計が欠かせません。次に考えるべきは、「その商品をどのように運用していくのか」という観点。ここが明確になれば、自然と商品形状やパッケージ、解凍方法といった設計上の選択肢が絞られていき、高品質で美味しく、顧客ニーズに最適な食材や食品が浮き彫りになっていきます。

解凍から逆算する──冷凍食品開発における「用途」と「シーン設計」の重要性

冷凍商品開発に取り組む際、まずは「誰に、どのような用途で販売するのか」を明確にすることが大前提です。大きく分けて、(1)業者向けに卸すBtoB商材、(2)一般消費者向けのBtoC商材、(3)自社で使用するための計画生産、この三つの用途に分類されます。用途が定まったら、次に考えるのは「食べるシーンの具体化」です。家庭用か、ギフトか、業務用として大量調理される前提なのか。食される場面を想定することで、商品のあり方がより具体的に見えてきます。

ありがちな落とし穴として、開発初期段階で「何を冷凍するか」「どうやって冷凍するか」を先に決めてしまうケース。しかし実際には、冷凍食品は「冷凍 → 保管(流通) → 解凍」という三つの工程を経てようやく消費者に届きます。この一連のプロセスは、むしろ解凍から逆算して設計する方がスムーズです。

販売先が自社以外になる場合(卸先や一般販売)では、解凍に用いる設備や手間が購入者側の条件に大きく左右されます。電子レンジやトースターしか使えない一般消費者と、スチームコンベクションなどの業務用加熱機器を有する業務用厨房では、適した商品が根本的に異なります。家庭向けであれば、「冷凍庫から取り出して5〜7分以内に食べられる」ことが求められることが一般的です。仮に「常温で3時間解凍後にお召し上がりください」といった商品は、日常使いにはハードルが高く、手に取られる可能性が低くなる。一方、業務用であれば調理工程を見越した逆算的な解凍が可能で、スチーム解凍や湯せんなどの対応も許容されます。

仮に家庭向けの「冷凍寿司」を開発したいと考えたとします。しかし、これを電子レンジで5分以内に解凍することは技術的に難しく、結果としてニーズに合わない商品になるリスクがある。そういった場合は、「炙り寿司」のような火の入ったネタに特化する、または寿司以外の商品に発想を転換するなどの柔軟なアプローチが求められます。ラーメンもスープと一緒に冷凍し電子レンジで熱々まで解凍しようとすると、通常の一人前であれば10分以上はかかってしまいます。それで「電子レンジで14分かかるラーメン」はどれほど美味しくても消費者の手には届きにくいという課題があれば、サイズを3分の2にし、5~6分で解凍できる商品にリサイズするというアプローチも有効です。

商品開発は「食べる人」と「食べるシーン」を想像することから始まります。子育て世代の忙しい母親にとっての時短食品なのか、大切な人に贈るギフト商材なのか。業務用であれば、給食施設や飲食店のオペレーションにどう組み込まれるのか。そのシーンを描くことで、開発の方向性は自然と定まり、「売れる商品」の条件が揃っていきます。

商品設計の次に考えるべき「運用設計」

ターゲットが明確になり、解凍方法にある程度の方向性が見えてきたら、次のステップは「商品をどのように運用していくか」。保管方法とオペレーション設計に移ります。この段階では、パッケージ仕様、賞味期限の設定、製造・保管のスケジュールといった運用面の設計が主な検討事項です。

長期保存が目的ではない時代の「賞味期限設計」

特に重要なのが賞味期限の設計です。冷凍食品だから何年も保存できるような認識がありますが、実際にはそれほど単純ではありません。添加物を使用すれば長期保存は実現できますが、昨今では「素材本来の味を大切にしたい」「添加物は極力使いたくない」と考える製造者が増えています。そうした背景を持つ事業者が、無添加で1年間の賞味期限を実現しようとすると、非常に長い開発期間を要することになる。それよりも、用途や流通に応じた現実的な賞味期限の設計が必要です。

例えば、EC販売を前提とした冷凍寿司の場合、消費者に「届いてから1週間以内にお召し上がりください」という案内が一般化しつつあります。賞味期限を短めにすることで美味しさを損なわずに食べてもらう設計で、「いつか食べるからストックしておく」商品ではなく、「今食べたい」「誰かと一緒に食べたい」目的購入に添った考え方です。冷凍食品=長期保存という固定観念を覆すような、冷凍食品の価値を「保存性」よりも「味と体験」に重点を置くものへと消費者や製造側のマインドが変化しつつある。そうすると、短い賞味期限が、冷凍食品としての弱点ではなく、消費者のニーズにマッチする強みに変わるのです。

運用性と品質を両立する保管計画

また、賞味期限の設定と同様、製造・保管において見逃せないのは保管キャパシティの現実性です。たとえば、月間500食の出荷を想定し、1ヶ月分をまとめて製造してしまうと、冷凍庫の容量が足りなくなるケースが見られます。このような場合、1週間で100食を製造する分散型オペレーションに切り替えることで、冷凍庫の新設といった設備投資を抑えることができます。また、雇用の安定という観点からも効果的です。週単位で製造スケジュールを組めば、スタッフの稼働日数をバランスよく配分でき、無理のない労務計画を実現できます。さらに、製造から使用までの期間が短くなることで、品質維持にも好影響を及ぼします。

品質を守るための視点──包装形態と温度環境

冷凍食品の設計において、賞味期限と並んで重要なのが「品質の維持」です。理論的にはマイナス18℃以下の温度を保てば長期間保存が可能とされていますが、現実には包装形態と温度環境という2つの要因によって品質が大きく左右されます。

第一の要因は包装。冷凍食品の品質劣化を引き起こす代表的な現象には「酸化」と「冷凍焼け」があります。これらの原因の多くは、酸素との接触や水分の蒸発です。真空せず酸素が残っている状態では、酸化が進み、風味や香りが劣化します。また、包装内の空気が多いと水分が抜けていき、冷凍焼けやパサつき、乾燥を引き起こします。

もう一つの要因は温度変化です。冷凍庫の温度は、想像以上に一定ではありません。業務用でも、デフロスト(霜取り)や開閉によって、短時間で-10℃近くまで上昇してしまうこともあります。氷点をまたぐ温度変化が繰り返されると、氷結晶が成長し、細胞や組織の構造が破壊され、ドリップの増加、食感や風味の劣化が発生します。理想は、-25℃など一定かつ低温の保管温度を維持すること。しかし、特に家庭用冷凍庫は開閉が多く、温度の安定性の確保は困難です。だからこそ、想定される保管環境に応じた商品設計が求められます。

チャネル別の賞味期限設計と添加物の最適化

流通チャネルによって求められる賞味期限の長さにも違いがあります。例えば、飲食店や仕出し業者が1週間程度の保管でよいと考える一方、小売店では「半年以上の賞味期限がないと仕入れたくない」という声が一般的です。スーパーマーケットでは、1/3ルール(賞味期限の1/3以内で出荷)といった商習慣が根強く残っており、長期保存可能な設計が求められます。このような長期保存を目指す場合、「食品の安心安全」から添加物の必要性が高まります。自社の歴史やポリシー、成長戦略など様々な観点から冷凍食品を販売するマーケットを決めることが必要です。

冷凍だからこそ実現できる美味しさと利便性を最大限に引き出すのは、使う人の状況に寄り添った設計

どんなに美味しい商品も、保管中に品質が劣化してしまえば意味がありません。逆に、少しでも品質劣化が起こらないように包装や設計を工夫し、最適な賞味期限と流通条件、解凍方法を設けることで、消費者にとっても事業者にとっても安心できる商品が生まれます。「誰が、いつ、どんな環境で、どうやって食べるのか」それを想像することが、すべてのスタート地点です。冷凍だからこそ実現できる美味しさと利便性を最大限に引き出すのは、使う人の状況に寄り添った設計。テクノロジーを活かしながらも、人の暮らしに根ざした視点を持った冷凍食品開発が、商品の競争力や「選ばれる理由」になります。

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